第2話 大型船と龍の帰還
実際に運河はできても、浮かべているのは小さな小舟だ。
なぜかというと、帝国は海に面していないから小さな川船しかないのだ。
そこで、大きな運搬船を作るという事になったのだが、運河での使用を考え長さ40m、幅10m程度の小型船を作ることにした。
建造数は最初の3年は10隻、この後1年ごとに10隻ごと増やし、10年で100隻にする計画だが・・。
だが問題は造船技術の確立。
ここで、俺の教え子から数学に長けた10人を選択し船の設計に当たらせた。
造船所は皇都近くの広場に作らせ、資材置き場なども確保した。
最初の半年は模型作りとの試行錯誤で、模型作りの為に5人程の大工を当てがった。
残りの半年で設計を完成し、設計の間、大工たちは防水技術の確立と造船所の建て替えに奔走した。この時、クレーン技術が確立されたのだ。
2年目に入り、1隻目を試作、これを運河に浮かべ、かなりの荷物を積んだうえで、一往復させたら問題なく10日で帰ってきた。
これを基にまず9隻の建造に入り、ここで先の大工たちが棟梁になり指揮を執った。
1隻目が出来た時点で技術公開し、商人たちも独自で船を作ったので技術公開が過ぎて3年たった時には全部で15隻の船が往来を始めていた。
あとは、随時増やしていけばいいわけだが・・商人たちが建造しはじめたので俺の計画は良い方向に崩れそうだ。
積み荷に対し、公定価格を決め、商人たちが貨客船として運航しても利益が出る様にした。
そして、話は大型船を設計し始めた年に戻る。
レムリアが妊娠したとき、医者の見立てでは既に3カ月だった。
だが・・爺様が気づいてしまった。「お前、妊娠6カ月」だぞと・・
レムリアの歳は1年に0.5歳しかとらない。つまりお腹の子も普通に妊娠3か月と診断されれば実際には半年前からレムリアのお腹にいたことになる。
つまり・・初日の情事でホームランをかっ飛ばしたわけだ。
だが問題は、生まれるまであと1年と2カ月掛かってしまう事だ。
お預けを食らう俺の精神状態が持たない・・
そこで爺さん・・来年初頭に俺とレミア、アリエスの二人と結婚するように勧めてきた。
この二人は結婚しても俺がツクヨミの加護を解くか、予定の日数に達しない限り妊娠することはない。
レミアとアリエスに待たせるのは不憫だという事だ。
母がレミアとアリエスの同衾を勧めたのも、彼女たちを思っての事だった。
そして、翌年の初頭、俺たちは結婚した。31歳と16歳の妻だが見た目は15歳。
当然、レミアにかかっていたウズメの加護を母が解除すると、皆が目を見張った。
やはり、めちゃ美人だったからだ。
お約束ごとで、1日目にレミア、2日目にアリエスと夜の情事におよんだのだが、アリエスに至っては夜の情事の時、滅茶泣いていた。前世の夢が本当にかなったのだと。
妻たちが血で染めたシーツは、母の宝物になっていた。
レムリアとアリエスのシーツは、母が持ち、レミアのシーツはレミアの母が持って帰った。
子供を成長させた証だという事らしい。
ただ、この2人、ツクヨミの加護だけは解いていない。どうしても、見た目2歳間隔にしたいという事らしい。まあ、俺は若い妻は嬉しいけど。
親父曰く「ははは、俺の血を引いている証拠」だと・・母を5年間15歳にしたままだった張本人に言われてしまったが、アリエスは、「2代目永遠の15歳よ」と宣言している。
この日から3人とも呼び方が変わった、姉妹での呼び方になったのだ。
レムリアはレミアとアリエスに対しては、レミアちゃんとアリエスちゃん。
レミアはと言うと、レムリアに対しては、姉さん。アリエスに対してはアリエスちゃん。
アリエスはと言うと、レムリアに対しては、レムリア姉さん。レミアに対してはレミア姉さんと呼んでいる。
爺さんに言わせると成長の遅くなった龍は大抵5人の妻を娶るそうだ。
そうしないと精神に異常を来し暴れてしまうそうだ。
おれの曽爺さんに至っては10人の妻持ちだったとか。
「爺さんの兄妹は?」と聞くと、「みんな、隠された村に行ったよ」と。
そして・・「お前と、レムリアとレミアは、はとこじゃ」と・・うむむ・・
「あれ?爺さんも2人以上妻を持たなかったの?」って聞くと、「俺の妻は婆さんだけじゃ」と。実は婆さんが爺さんの乳母だったとか。
「そういえば、婆さんの墓を見たことないな」と言ったら、「何勘違いしとる?あ奴まだ生きておるぞ」っと、驚愕のお言葉。
「隠された村でのんびりと暮らしておるわい」と・・
なんでも別の龍の娘に浮気したところを見咎められたとか・・・オイオイ。
で・・ばあさんは家出し・・爺さんは連れ戻しに行ったのだが・・「曾孫に呼びに越させない限り帰らないよ」っとこもってしまったとか。それ以降、独り身を貫いているとか・・俺と母に病死したって嘘をついていたんだ。
「ちょっと待て、俺の子に?」と聞いたら、「そうじゃ」と答えた。
レミアに聞いたら、一度会ったことが有って、祠に籠っているとか。
レミアには「子供が出来たら連れてきな」と言っているそうだ。
母はというと・・時々会いに行っているそうだ。
「まあ、子供が生まれたら行ってみるか・・」
そして、この年の夏、俺の第1子が生まれた。名前は、ウォルフ。ウォルフ・フォン・ムルマーシュ。男の子だ。
乳母は、母に選択してもらって15歳の金髪の少女を付けてもらった。少女の名はメリス。のちにウォルフの妻になる予定だが・・当然、ウズメの加護とツクヨミの加護がかかっている。
俺と親父には醜女にしか見えないというわけだ。母曰く、当然でしょとか・・まあ16年後が楽しみねと。
メリスはレムリアと精神感応しているので、当然、母乳が出る。
さらに、母と言えば・・レムリアと精神感応しているのでさらに14年間出るようになるとか・・オイオイ。
そして、レミアとアリエスもウォルフに乳を上げたいと言い出してレムリアと精神感応してしまった。
「ウォルフ・・羨ましすぎるぞ。半分は残しておいてくれ」と俺。
親父も同意見だ。
そして、俺、レムリア、ウォルフを伴って、隠された村に向かった。
婆様を説得するためだ。
村に付いた途端、一人の母そっくりの女性がやってきた。
「ふむ、やっと曾孫を連れて来たか・・」と。
「「「お、お婆様?」」」と俺たちは驚愕した。
「そうじゃ、儂がアシャの祖母、イザミ・フォン・ムルマーシュじゃ」
「母そっくりで、びっくりしました」と俺。
「大方、儂を連れ戻しに来たのじゃろう」
「はい」
「そうじゃ、曾孫の顔も見せてくれんかの?」
「はい」といってウォルフを見せる。
「うむ、父親にじゃな」
「はい」
「さて、長年の怒りも治めるとしようかの」
「では、戻ってくれるのですか」
「まあ、約束だから仕方ないし、お前らの顔も見たいしな」
「「はい」」
そして、俺たちは祖母を連れて城に戻った。
出迎えた祖父は平謝りの連続。
母は祝いの席を設けてくれた。
そして、翌日、アツアツの爺さん婆さんの姿を俺たちは見た。
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