この風変わりな転生に祝福を!

冷菓子

第1話 ニート、使命を得て転生


 ……声が聞こえる。

 ふわふわとした不思議な感覚が体を包む中、「体」があることに気づいた俺はゆっくりと目を開ける。すると、目の前に神殿のような風景が広がった。

 そして、神殿の中央に佇むように座っている綺麗な女性。

 ゆったりとした青白い羽衣に身を包み、長い銀髪を揺らす彼女は、慈しむような表情で口を開いた。

 


「アイマさん…。ようこそ、死後の世界へ。私はあなたに新たな道を案内する女神、エリス。この世界でのあなたの人生は終わってしまったのです」



 それを聞いて、俺はおぼろげに「あぁ、やっぱりか」と無心で納得していた。

 


**************************************

                  

                         

 土曜日の朝。

 惰眠を貪り、ふと目が覚めた俺、「アイマ」はベッドで冴えた目をして壁を見つめていた。

 ……珍しい。

 まさか、こんなにもスッと目が覚める日があるなんて。今日は雪かもな。なんて馬鹿なことを考えながら、二度寝する気もないのでベッドから起きる。

 うん、と伸びをしてそのまま時計を見る。時刻は朝の5時。あまりに早すぎる起床だ。

 今は親は起きていないだろう。俺は部屋を出て階下のリビングで食べ物を漁る。菓子パンを見つけ、また部屋に戻ると机の上でもそもそと食べ始めた。

 

 ……明確にニート生活を続け始めて大分経った。

 王都に近く、多くの有能な冒険者が多く治安も良いこの街、「ラティ」では住人の認識として「15歳までには冒険者になるか、職を見つけるか」を定めるという暗黙の了解がある。

 大体13歳には先を決めるのだが、俺はなんだか機会を逃しズルズルと引きこもり生活を続けてしまっていた。

 気づけばあっという間に15歳はすぎ、18歳。周りの知人は始まりの街、「アクセル」で活躍し始めている頃だろう。

 俺は、この小さな部屋でだらだらと過ごしている。

 別に危機感はない。いや、あったほうがいいんだろうがなんだかいつでも動けそうな気がして危機感などなかった。

 多分、動き出したらうまくいかず結果、落ち込むんだろうが。

 

 菓子パンを食べ終わり、ゴミ箱に袋を捨てると椅子を窓の近くまで動かす。

 窓を開けて、朝の爽やかな風を受けながら、小鳥の声を聞きボーッと外を眺める。

 最近の日課だ。やることがないだけなのだが。

 やることないなら、働けと言われそうだがそんな言葉は右から左に流れていく。

 チュンチュンと種類もわからないが、よく聞く小鳥の声を聞きながら今日一日どうしようかと思案する。


 たまには外にでも出てみようか。いや、知り合いが多いしダメだな。確か、隣に住む仲の良かった女の子は冒険者になったものの、優秀でこの街でいきなり活動していたはずだ。

 新人は必ずアクセルの街に行くものだが、彼女は昔からやること成すこと優秀だったし妥当だろう。

 となると、外に出ると会う可能性もある。侮蔑されても同情されてもめんどくさい。外に出るのは避けたい。

 だが、外に出ないとなると部屋でゴロゴロするだけ。それも微妙だ。

 ……そういえば、親のものだが「光の屈折魔法」と同じ効果を発揮するマントがあったな。

 それで、またあの廃墟に出かけて古本を探すのもいいかもしれない。

 そうだな。よし、今日はあの廃墟に行こう。

 今日の予定が決まった俺は、外を眺めるのをやめ窓を締めようと立ち上がる。

 

 …その時だった。

 

「……?なんだ?なんか音が…」

 どこかから、ヒューっという甲高い音が聞こえる。俺は窓から顔を出して、あたりを見渡す。

 …やはり聞こえる。というか、なんか音が近くなってるような。

 俺は、唯一取った冒険者のスキル、「千里眼」を発動させあたりを見渡すと。

 それは千里眼でズームされた映像だったのか。

 

 俺の目の前に、一本の弓矢が近づいていた。


「…………っ!」

 やばい、と思った瞬間「ごんっ」とおでこあたりに衝撃が走る。直後、ガンガンとした痛みが頭から体中に響く。

 あぁ、これ、やばいやつだ。

 そう感じながら、俺は最後の抵抗として「千里眼」を強め矢が飛んできた方向を見た。

 

 目の前が霞む中、黒いフードをかぶり弓を構えた女が映った。

 

 

 あぁ、ちくしょう。

 こんなに、こんなにも。

 あっさりと終わるものなのか。

 

 今までの後悔、走馬灯なんか思い出す間もなく。

 俺は意識を失った。

 

*************************************

 

「……死んだんだな。俺」

 死の直前の記憶を思いだし、俺はぽつりと呟いた。

 すると、目の前の美少女…女神エリスが悲しそうに答える。

「……混乱しているでしょう。ですが、大丈夫です。私が、貴方のこれからをきちんと導いてあげますから」

 彼女はそう言って俺に笑いかける。

 あぁ、なんという美少女。正直、あまりにあっさりとした死に方で、とんでもない痛みがあったわけでもないので混乱とかはしてないのだが、なんだか心が癒される。

 俺は柔和な笑みを浮かべるまさに女神なエリスに、これからというのはどういうことかと…。


 ……エリス?

 そういえば、色々ありすぎて流してたが…。

「…あなた、エリス様なんですか?あのエリス教の御神体の?女神様の?」

「えぇ。この世界のエリス教の女神ですよ?」

 そう答えたエリス様は、今度はなんだかイタズラっぽい笑みを浮かべた。

 可愛い…。

 …と、そうじゃない。

 エリス教といえば、この世界の国教だ。各地に教会があり、エリス感謝祭なんて祭りもやっている位だ。

 ……長年の引きこもり生活の弊害で、女の子を直視できないというデメリットを抱えている俺はすぐには気づかなかったが、よく見れば、生活していれば目にするエリス紙幣に描かれている肖像画そのものの姿だ。

 こんなところで出会うなんて。まぁ、国教であるエリス教の女神様がこの国の死者の案内をしているっていうのは、納得できる。


 俺は勝手に自分の中で折り合いをつけ、聞きたかった本題へ移る。

「…で、エリス様の言うこれからっていうのはどういう事なんですか?」

 聞くと、エリス様はさっきの笑みから一転して真面目な顔をして説明しだした。

「死者には、まず二つの選択肢があります」

「…選択肢?」

「えぇ。一つは俗に言う、天国に行きのんびり暮らす。というもの。もう一つは、赤子となりこの世界でもう一度やり直すこと。この二つです」

「…………」

 …なんというか。知ってた。という感じだ。

 まぁ、死者の選択肢なんてそんなものだろう。それこそ、アークプリーストとかが近くにいて「リザレクション」を使ってくれるとかがないと、このまま生き返るなんてことはない。

 ……なんだ。もう終わりなのか。

 俺は今更ながら心のざわつきを感じ、取り繕うように続きを促す。

「…まぁ、片方はわかるとして。天国っていうのはどんな感じのところなんですか?娯楽がいっぱいあるとか?」

「いえ。天国に行くといっても、体が作られるわけじゃないので霊体のまま何にも触れず、食べられず、娯楽なんてないって感じですね。やれることを言うと、周りの死者としゃべるかボーッと日向ぼっこするくらいでしょうか…」

 何それつまんない。

 天国というか、ある意味地獄じゃないかそれ。

 ……天国に行くのは、嫌だなぁ。…と言っても、赤児からやり直すっていうのも、なんか嫌だ。

 というか、なぜこの選択肢を本人に委ねるのだろう。今、俺自身がめちゃくちゃ悩んでいるようにこの自我がある状態でこれについて考えるのは、酷だろう。

 せめて、蘇る選択肢があったりすればいいのだろうが、それは倫理的にもやばいだろう。


 ……ほんと、どうしようこれ。

「…悩みますよね。当たり前です。何か、強制できたりすれば楽なのでしょうが、個人の意見を尊重するというのが上の決定でして…」

 上って。女神様とかにも上下関係とかあるのか。

 ……いつまでも悩んでいても仕方ない。仕方ないのだが。

 どうしても、「赤子からやり直す」という言葉が出てこない。

 あっさりした死に方だが、どうしてもやりきれない思いが募っていく。

 別に、このあと生き返れたとしても俺の人生が一転するわけでもない。多分、また引きこもるのだろう。

 いつまでも過去の思い出を思い返しながら、あの小さな部屋で過ごすのだろう。そんな人生になんの意味があるのだろうか。

 それでも。

 それでも、俺は自分の人生を簡単に投げ出してやり直すとは言えなかった。

 …なんというわがまま。道はないし、やり直すことしかないのはわかっているのに。

 

 どうすれば心の納得がつくのか。

 頭を抱えることもなく、ただうつむいてどうすればいいか考えて、だいぶ経っていた。

「………………」

 エリス様からの視線を感じる。

 そりゃそうだ。いつまでもこうして黙っていたら嫌にもなるだろう。

 俺は謝ろうと顔を上げると。

「…大丈夫ですよ。ゆっくり考えてください。死後というのは、普通であればもっと混乱してもいいくらいです。どんな人でも、歩んできた人生がありますから。それを捨てるかどうかを考えるのです。長考して、当たり前です」

 ……ほんと、いい女神様だ。

 次の人生では敬虔なエリス教徒になろう。

 俺はエリス様に引きつった笑いを浮かべる。

 ……よし。決めた。

 赤子からやり直そう。それしかないのだ。いつまでも暇な天国で過ごすなんてまっぴらごめんだ。

 できるなら、今度の人生は「ここ」で泣くくらい良い人生になるようにと祈りながら。

 俺は……。

 

 

 ゴーーーーン!

 

 

 突如なった鐘の音に、俺はびくりと体を震わせる。

「な、なんだ?」

「…連絡鐘れんらくしょう?こんな時に?……すみませんアイマさん。少し、待ってくださいね」

 エリス様はそう言って立ち上がって、パチンと指を鳴らすとどこかに消えた。

 あまりの出来事に呆然とするが、すぐに何かあったのだろうと理解した。

 ……なるべく早くしてくれないと、決意が鈍るのですが。

 そういえばここは女神さまがいるような神聖な場所だったなと思いだし、そわそわし始めながらエリス様を待っていると。

 数十分位だろうか。ようやくエリス様が帰ってきた。

 なんだか、深刻な面持ちで。

 なんだろう。もしかしたらニートは赤子になれないとかだろうか。そんな理不尽言われたら、流石に泣く自身があるが。

「……アイマさん」

 さっきとは全然違う声色で俺の名を呼ぶエリス様。

「は、はい。なんでしょうか」

 俺は若干怯えながら答える。

 エリス様は一つ、呼吸をしたあと答えた。

 

 

「もう一度、人生をやり直す気はありませんか?」



「…………へ?」

 まさかの質問に、俺は素っ頓狂な声を上げた。

 な、なんだって…?

「…もう一度聞きますね」


「人生を、その体でやり直しませんか?」



「え、えっぇぇ!!?」

 俺は、先ほど女神エリスだと気づいた時よりも何倍も驚いたリアクションをする。

 な、なんで。

 俺の顔から、唐突な提案に動揺していることを感づいたのかエリス様は説明をしだした。

「…こちらの事情の話になるのですが、先日、天界を堕天して地上に降りた女神が一人いまして。その女神が今、魔王軍に関与してこの世界で暗躍しているとの情報が入ったのです」

「え、えぇ?堕天?」

「そう。通常、堕天した女神は天界の者を出して早急に探し出すのですが…。どうやら、神器…というとわかりますか?」

「ま、まぁなんとなくニュアンスから…」

 神器…。神と名に付くくらいだし、すごい道具みたいな感じだろう。

「神器というのは、神…つまり私たちから授かった道具や武器のことを言います。大抵、地上ではありえないような能力を持っているものが多いです。貴方は王都に近いラティの出身でしたね?」

「え、えぇ」

「王都に、なんだか変な名前ですごい力を持った冒険者がいたりしませんでしたか?」

 ……聞いたことがある。

 王都には力のある冒険者が応援に行っており、そういう冒険者は名前が変で見たことのない武器を扱っていると。

 斯く言う俺も、ひとりだけ知っている。実を言うと、その人は今でも憧れを抱くような、目標の人だったりするのだが。その人も、今ではネタスキルと言われているスキルを扱う変な名前の人だ。

 名を「ノヤマシン」という。

「……心当たり、あるようですね。その人たちが持っている武器、道具のほとんどは神器です」

「うえぇ!?」

 マジか。あの人、そんなすごい人だったのか…。

「…で、その神器がどうしたんですか?……まさか」

「……その堕天した女神が神器を持っているようなんです。それも姿を隠すタイプの」

 うわぁ、最悪だ。

 女神を探し出さなきゃいけないのに、神器で姿を隠していて、しかも魔王軍に関与している…。


 なんという詰んだ状況だ。分かりたくないが、話の重大さは分かってしまった。

 わかったのだが…。

「…で、それと俺の転生?となんの関係があるんですか?」

 そう。これだ。

 大元の話は、俺が体を持って転生することを提案されている理由だ。

 だというのに、急にこんな話をされて、関係があるとは思えない。

「…貴方は、死ぬ直前、貴方を撃ったアーチャーの姿を見ていますよね?」

「え?…あぁ、見ましたよ。もう意識が途切れる寸前でしたけど。黒いローブをかぶった、女の人でしたよ」

 そう、俺はそいつになんの関係もないのに弓矢で朝から打たれて、死んだ。

 俺はニートをしていたが特に人に恨まれるようなことはしていなかったと思う。

 強いて言うなら、親だが…。「親だが」って悲しいな…。

 ま、まぁ、親なわけだが、あの時リビングに行った時に二人の別室からの寝息といびきを聞いている。

 それに親は昔、冒険者だったが、母はウィザードで父はクルセイダーだ。アーチャーの経験はない。

 となると、あいつは赤の他人のわけだ。

 ……そう考えると、腹たってきた。なんでどこの馬の骨ともわからない奴に殺されて、その上ここまで悩まされなきゃならんのだ。

 転生できるのなら、報復したい。


「…あの、いいですか?」

「え?あ、すんません。で、あの糞ビッチ野郎となんの関係が?」

「くそび……。こほん。実は、その女性から堕天した女神の力を観測しました」

「は!?」

 まさかの展開に、俺は椅子から立ち上がった。

「…彼女は、女神をかくまっている可能性があります。その上、魔王軍の関係者です」

「え、えぇー…」

 あまりの一致具合に俺は思わず声が出る。

 …この状況、この話。

 これで、転生の話をされる。ということは。


「……アイマさん。もしよろしければ転生して女神とその女性を探し、止めてきてくれませんか?」


「はい!止めてきます!」

「そうですか…残念です………えぇ!?」

 即答した。

 エリス様はあまりの即答具合に驚いた声を出した。

「い、いいんですか!?あまりに理不尽で馬鹿げた話だと思いますが!!」

「そ、それ言っちゃっていいんですか?……まぁ、その正直止められる自信はないっす」

 俺は後ろ髪を掻きながら、言う。

 そう、自信などない。むしろ、探す前にまともな生活送るだけで死にそうになるだろう。

 だが。

 

 いつか見た、憧れの人の言葉。

 俺は、それを久しぶりに思い出していた。

 

『逆境こそ、男の、人の生きる活力!

 ピンチな時こそ自分を奮い立たせ!

 自身が積み上げた力を、道を信じ、戦うのだ!』

 

 そうして、両の手に持った剣を振るい魔王軍の軍勢から街を守った冒険者。「ノヤマシン」

 そんな彼みたいな、人生を送りたいと何度思ったか。

 

 これはチャンスだ。

 こんな運命的な展開、燃えないわけがない!

 ……なぁんて言ってみたが、まぁ半分くらいはこのまま生き返れることということが目的だ。

 それでも、あのフード女に「なぜ俺を狙ったのか」とか聞きたいし。一応。

「俺、頑張ってみますから。何よりこのまま生き返れるわけですしね。その恩恵に比べたら…」

「…そうですか…!本当にごめんなさい…!こちらの問題なのに、巻き込んでしまって!」

「まぁ、なんだ。いいじゃないですか。運命的で!すげぇ燃えます!」

「……ですよね!わかります!正直、話聞いたときすごく胸の奥が熱くなりました!!」

 あ、あれ?絶対、「は?」とか言われると思ったのに。

 エリス様、案外男っぽい趣味好きなのか?

 というか、このテンションの高さを見ているとこの無理難題、エリス様が考えたんじゃないか…?

 まぁ、可愛いからいいや。

 


「では、今回の転生…ですかね。について、説明しますね」

 改めて椅子に座った俺は、エリス様の話を聞いていた。

「今回は堕ちた女神、『ルサリィ』の捜索と保護。もしくは撃退。同時に神の力を授かった黒フードの女性の捜索と撃退。そして、神器の保護もお願いします」

「……こう聞くと、腰引けるっすね」

「が、頑張ってくださいよ…。今回はこちらからの依頼ですし、全力で協力します。ルサリィの捜索もいつもどおりしながら、フードの女性の捜索もします。ただ、原則天界の者が地上の人に情報を漏らすのは御法度です。ですので地上へ、私自身が変装してあなたのもとへ行きます」

「え?それ大丈夫なんですか?」

「……まぁ、違法なことやるのはなれてますから…」

 ……こんな人が違法なことに慣れてるのか。案外、天界はブラックなのかもしれない。

「私が気を見計らって地上に行くので…。えっと、ちょっとすみませんね」

 エリス様が唐突に、座っていた椅子の後ろに行ってパチンと指を鳴らした。

 瞬間、カッと光がもれ、エリス様が出て…。


「…え」

「ふぅ、ここでこの格好するのはちょっとあれだなー…」

 出てきたのは、短髪の盗賊職の格好をした少女だった。

「も、もしかしてエリス様ですか?」

「うん。実は、さっき言った神器の回収やその他もろもろをしに、地上にこの姿で降りることがあるんだ」

 ……女神って大変だなー…。

 と、エリス様はまた椅子の後ろに行って指を鳴らし、元の姿でまた出てきた。

「先ほどの姿で貴方のもとへ行きます。そこで情報交換をしましょう。ちなみに、先ほどの姿では『クリス』と名乗っています。よろしくお願いしますね?」

「は、はい!」


「…では、続きを。捜索、といっても急すぎて大変でしょうから、こちらの捜索の目処が立つ、もしくはアイマさんが手がかりを見つける、といったことがあるまでは冒険者として生活を送ってください。今回、特殊ではありますが通常のリザレクションと同じ形で蘇生しますので、将来の生活も考えて行動してくださいね」

 ……なんて良心的な提案。さっきブラックとかいったがそんなことはないようだ。

 ただ、少し気がかりなことが。

「…ちなみに、俺の親とかってどうなっちゃうんですかね?ていうか、向こうでは俺はどんな扱いに?」

「…通常、リザレクションされる時は大体知り合いといるものですから、親族の心配などはないのですが今回はもう周りに『死んだ者』としてトウヤさんは認識されてしまっています。なので、今回貴方と近しい人と会っても『似ているな』としか感じないようトウヤさんの体に魔法を付与します」

「そんなことできんのか…。わかりました」

 俺は取り敢えず、親が「息子の幻覚を見た!もうダメだ…」とかならないことに安堵する。

「では、次の説明を。今回、蘇生する場所は故郷ではなくアクセルの街となります」

「え?アクセル?」

「えぇ。冒険者として始めるなら良い状況だと思います。蘇生してからはこちらは干渉できませんから…。そこからはなんとか頑張ってください」

「へい…」

 やっぱそうなるよな。エリス様が地上に来てる時とかにクエスト、手伝ってくれないだろうか。

 しかし、どうなろうとやるしかない。これしか道はないのだ。


「これで大体の説明が終了ですね…。では、心の準備の方はよろしいですか?」

「は、はい!大丈夫っす!」

 俺は思わず立ち上がり、敬礼する。

 エリス様はそんな俺の姿を見て、なんだか悲しげな顔をした。

「…本当にごめんなさい。こんな危険なことに巻き込んでしまって…」

 ………。

「だ、大丈夫っす!」

 俺は、胸を強く叩いて。

 自分にも言い聞かせるように高らかに叫ぶ。

 

「逆境こそ、男の活力っすから!」


 エリス様は少し驚いた表情をしたあと、ふふと笑って。


「では、行きますね?」

「はい!どうぞぉ!」


 エリス様が指をパチンと鳴らす。

 足元に魔法陣が形成され、「おお、こんなになるのか」と驚く。

 

「アイマさん!ご武運を!『蘇生せよ!』」


 エリス様が高らかに叫ぶと、俺は目の前が真っ白になり体が浮き上がった。

 

 これが、俺の波乱万丈な新たな人生の始まりだった…。

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