花をたずねて月日の移り変わりを楽しむ

むらた@異世界のトラックの助手席

万両

 思い立って八瀬の神社を訪れた帰り道に、蓮華寺というお寺を見つけました。門は狭く、脇には万両がひょろりとあるという構えの、山の麓の小さなお寺で、少人数なら拝観しても良いという旨の張り紙がしてあるお寺です。入ってまずはお線香をあげて、夕日が落ちる前の冷えた畳に腰を下ろして、庭園の様子をぼんやりとながめはじめました。

 そのときの記憶に残っているのは、廻遊式庭園の道に沿って背の高い万両が赤い実をぽつんぽつんとつけていたこと、それから岩場と池の周りを千両や十両が飾っていたこと。それから、薄暗いお堂の中で阿弥陀如来像が差し込む夕日で輝いていたこと。万両ってこんなに美しいのだなと心を打たれ、次第にあたりが暗くなっていくことを惜しく感じたことを思い出します。

 下側の葉を落としながら成長していく万両は、細いながらにそのバランス感覚には驚きます。長い幹の先端に葉と実をつけて、欲張らない感じが良いです。背の低いものと背の高いものが隣り合ったりしては、絵画的なリズムができてまた美しい。苔の広がるお庭が身近にあったら、林床で小さく佇む姿とか良いのですけどね、苔のお庭はまた夢の話です。

 京都へ越してきたときに実家から小さな万両の苗をひとつ連れてきたわけですが、いつか自分のお庭が持てるといいなと密かに楽しみにしています。

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