勇者であるには弱すぎた

ウィック

弱さと強さ

第1話 生きる意味

「ネイト、ご飯食べなよ」

レイは言った。

「ご飯‥‥、吐きそう‥‥」

ネイトは気分が悪そうな顔をして便所に向かった。

「ネイト!?」


しばらくすると便所からネイトが出てきた。

「ちょっと、死んできていいかな‥‥」

「ダメにきまってんだろ!」

レイはここのところ怒ってばかりだった。

「お前は勇者なんだからな!」

このネイトという少年は勇者なのだ。


「あのさ、夢とかある?」

「なんだよ、急に」

レイは言った。

「僕は、みんなが幸せになったらいいなって」

それを聞いてレイは不思議な顔をした。

「だったら、叶うじゃないか」

しかしネイトは首を振った。

「魔族を倒せば‥‥魔族が苦しむ、モンスターを倒せばモンスターが‥‥苦しみはね、存在するんだ」

ネイトはそのまま、ローブの中にうずくまった。

「もう嫌なんだ、苦しいのを見るのが‥‥」

レイは呆れつつも、納得はできた。

「だとしても、魔族やモンスターを倒さなければ人々が苦しむ」

ネイトはそのまま、ローブから出てこない。

「僕が勇者とか‥‥こんな夢とか‥‥」

「お前、そんなに苦しいのか」

レイは内心勇者を強いることを躊躇っていた。


「聞こえるんだ、生き物の感情、物の感情‥‥勇者の力だろうけど、こんなの‥‥」

勇者は短剣を取り出し自分の胸に刺そうとした。

「やめろ!」

勇者の短剣を取り上げるがネイトは、笑い出した。

「死ねるわけないじゃん‥‥」

ネイトには死ぬ勇気すら残されてなかった。


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