正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー

プロローグ

【お詫び】

こちらの作品は諸事情により未完となります。

改正版として改めて書き直している作品がございますので、そちらをご覧いただければ幸いです。


ってか武士の情けです。見ないでください。・゜・(ノД`)・゜・。


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レガリア王国王城のプライベート庭園

庭園では王妃と王子、王女達の楽しそうな笑い声が聞こえて来る。



「ドゥーベ王国にも困ったもんだ。」

レガリア国王アムルタート・レーネス・レガリアが数名を共を従えて長い廊下を会議室へと足早に向かっている。


隣国であるドゥーベはレガリア王国の北東に位置する国で、寒冷地ゆえ採れる作物も多くは無く、また特に名産とよばれる品も無い為か、実り豊かなレガリアにいわれ無い理由をつけて、度々賠償金や食料などを要求してくるのである。


レガリアとしては突っぱねてもいいが、ドゥーベ王国の民を飢えさせる訳にもいかず、人道的な支援の為として物資を提供してきた。


「しかし陛下、わが国も近年作物の収穫量が回復してきているとは言え、10年前の大飢饉の傷跡が地方で多数残っております、支援していただいた同盟国のアルタイル王国やレグルス王国への負債も終わっておりません。」

「陛下のお気持ちは尊重いたしますが、我が国民にこれ以上負担をかけるのはどうかと・・・。」


宰相達が不満を持ち出すが気持ちは十分に理解できる、10年前の大飢饉は、大地が干上がり作物が全くとれなくなったのだ。

その時は同盟国から大量の食料支援と資金を借り受けることができた為、国民を救うことができたのである。だが大地の傷跡があまりにも大きく、現在でも完全に復旧はできていない。さらに資金として借り受けた『言わば借金』がまだ残っている状態だ。


幸い、偶然現れた聖女が『豊穣の儀式』を執り行ったおかげで、現在は徐々に大地は恵みを取り戻しつつあるが、国民の生活は未だ豊かとは言えない状態が続いている。国王としてもこれ以上民負担をにかける訳にはいかない。


「だが、食料支援を断れば適当な理由をつけてわが国の批判を隣国にばら巻いた上、最悪戦争に突入するぞ?」

現に2年前支援を断ったら、ドゥーベ王国の一部の民が貧困の為レガリアに流れて来たのを理由に、「わが国民を無理やり連れ去った!」といきなり戦線布告をしてきたのだ。


「ドゥーベの国民が干上がった場合、難民としてわが国に流れるか、戦争の兵士として徴兵されるだけだ。」

難民としてレガリアに流れてきた場合、人道支援として救済しなければならないし、中には難民として敵の間者が大量に紛れ込む可能性もある、そんな事になれば戦争時、内側からの攻撃にも対応しなければいけないのだ。


「先ほど届いた諜報部隊の情報からもドゥーベ国内で不信な動きが確認されております。」

一部の騎士団には他国の情勢、特にドゥーベ王国内部の動きには事細かく調べさせている。


「騎士団長、それは戦争準備をしていると?」

騎士団長からの報告に思わず足を止めて問いただすと

「そこまでの動きはございませんが、何やら怪しい連中が城に出入りしているようです。」



その時、廊下の前方より見慣れた顔の騎士が、慌ただしく走り寄ってきた。

「陛下!何者かが城内に侵入したとの事です!!」


「「「!!!!!!」」」


「カリス、賊は何者だ!?」

報告に来た騎士カリスに騎士団長が問う。


「出入りしている商人の荷車に隠れていたようで、賊は3人、現在宮廷騎士が捜索にあたっております。」


国王である我とカリスは幼少の頃より友人であり、現在は国王直属の専属騎士でもある、また王妃フローラに昔から仕えている侍女のセリカとは夫婦である為、身分を超え家族ぐるみで仲が良い。


「カリス、フローラ達のいる庭園に行け!娘達もそこにいるはずだ!」

賊が暗殺者であった場合、狙われる可能性が高いのは王族の命。


カリス夫婦には娘が1人おり、日頃屋敷を留守にする為、娘は母親のセリカが、王妃フローラの侍女をしながら面倒を見ている。その関係でいつも王子王女達と一緒城内にいるのだ。

カリスは一瞬考えた末「すみません!」と断って中庭の方へ走って行った。


「陛下もすぐに安全なところへ!」

騎士団長が促すが、その時、カリスが向かった庭園のほうからフローラの叫び声が聞こえてきた。


「私達も庭園に向かうぞ!」

「陛下お待ちを!」

宰相達が止める声がするが、すでに騎士団長とともに駆け出している。


カリスや騎士団長ほどでは無いがそこそこ剣も使える、王妃や子供達の命が危ないのに、安全なところに隠れているなど出来るはずもなかった。


途中壁に掛けてある飾り用剣を取り庭園に到着すると、そこには血だまりの中倒れているセリカの姿、その近くには泣き叫ぶ王女達と、カリス達の娘アリスの姿があった。






キンッ!キンッ!

剣の音が響く方を見ると、庭園の端で顔を黒い布で覆った賊の1人と、カリスが剣の立ち居振る舞いをしており、近くにはすでに事切れ賊の1人が倒れている。


「陛下お下りください!」

騎士団長が賊との間に立ちふさがる。

その時ようやく騒ぎを聞きつけた騎士達が集まってきた。


「お前達は王妃様と姫君達を安全なところへ!」

騎士団長が騎士達に指示を出し、一行が王妃達のところへ向かう瞬間、一人の騎士が抜き身の剣を持ち自分へと向かって来た。


一瞬の油断だった。剣を多少使えるからと過信していたのかもしれない。

賊は3人そう聞いていたのに目の前の状況に動揺し対応が遅れた、騎士に扮した賊が自分に向けて襲ってきた。

誰かが陛下!と叫んだ気がしたその後、時がスローモーションのような感覚に囚われ死を覚悟した、そして気づいた時には賊の胸に剣が刺さって倒れていく姿だった。


「!?」

一瞬何が起こったか理解できなかったが、目の前には私に向かって来た賊に剣が刺さっており倒れている、誰かが剣を投げたのだと分かるまで時間を要した。


「お父さんっっっ!!!!」

悲鳴に近いアリスの声に気づき戦っていたカリスの方を見ると、そこには胸から剣が突き出た姿があった。


「貴様っ!」

騎士団長が素早くカリスと撃ち合っていた賊に向かっていき、賊も騎士団長に対峙するよう剣を構えた。

賊は騎士団長と数度撃ち合った末、捕虜になるのを避ける為か自らの剣で自害した、カリスがすでに致命傷を与えてのだ。


泣きながらカリスの元に近寄るアリス、自身も急ぎ駆けつけると、かろうじて意識が残っていた。だが、もう助からないのは誰の目にも明らかだ。


「へいか・・、ごぶじで・・」

「あぁ、お前のお陰でキズ一つない。」

もう救う事ができない、幼い頃より唯一の友人と呼べる存在、自分にできるのはもうただ一つ。

「アリスのことは心配するな・・・」

その言葉にほんのわずか微笑んだ後、二度と目を開けることはなかった。


蒼天の空に、ただ一人の少女が泣き叫ぶ声のみ響いていた・・・。

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