第14話

ダッシュまで、5...4...3..2...1!私は走り出す。いまだかつてないほど、全力で走る。もう、耳は聞こえない。でも、思考と視界はクリアだった。思考は、非常階段にいることだけを想定していた。視界は、目の前の階段だけを写していた。大丈夫だ。いける。3階まで上がったところで、教室で授業をしていた顔に覚えのある先生と目があった。想定内だ。もう、あの人には追いつけないところまで来ている。それでも、全力で走って、ついに4階に着く。左に曲がって、全力で走る。見えて来た非常階段を見て安堵する。トビラを開けて、、外に出る。4階の一年生は、体育で、いないようで、ラッキーな事に少し思い返す時間ができた。肩で息をしながら、鍵を締める。さっきの先生は、追いかけてこない。なぜだろう。どうでもいいか。先生が、下から追いかけて来ても、足音でわかるし、大丈夫だ。その時下から音がした「ガチャガチャガチャ」私ははっとして、鍵を開ける音だ、と思った。どうしよう。はやく、跳ばなきゃ。階段の手すりに足をかける。手すりに両足を乗せ、立つ。目を瞑る。大丈夫。怖くない。目を開けるとすぐそこの段に担任の先生が登って来ていた。わたしは小さく呟く「ばい…ばい。」

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