25.Manganese 【マンガン】

 24番が言っているのは、電池のこと、かな……。


 はあ……、じゃあまず、電池のことを、少し話します。

 電池にはボクの酸化物、二酸化マンガンが使われてることが、多いです。


 マンガン電池って、きいたことがあるでしょうか。最近少なくなってしまったことは、もちろん知ってます。いま、よく使われているのは、力があって長く使える『アルカリ電池』や『リチウム電池』ですけど、マンガン電池にも良いところがあります。休んでいると、ほんの少しだけ電圧が復活するのです。力は弱いけれど……たとえば、テレビのリモコンや懐中電灯には、マンガン電池が向いています。


 よく誤解されますが、『アルカリ電池』や『リチウム電池』の正極にもボクの酸化物は使われています。ヒトがよく使う乾電池のなかには、たいていボクが潜んでいると思って下さい。


 どういうわけか、ボクを見ると8番が寄ってくるので、天然の状態では単体のボクは産出しません。ボクが眠っている洞窟なんかでは、8番が少なくなることがあります。生き物にとってはあまり良い環境とはいえないので、気を付けたほうが良いです。


 あとは……、そう、ボク単体を見たことがなくても、二酸化マンガンなら目にしたことがあるはずです。学校の理科の実験で、よくオキシドールと反応させられますから。この反応では、酸素が発生しますが、二酸化マンガン自体は事前と事後で変化しません。自身は変化せず、オキシドールを分解させて8番、つまり酸素の発生を促すのです。こういうときにボクのように使われる物質は『触媒』と呼ばれているみたい、です。


 ボクは生き物にとって必須元素のひとつですが、河川の水は水道水に充分含まれているので、不足することはまず、ありません。

 それから金属としてのボクは……、合金に入れると靭性が高くなり、カミソリみたいな鋭い刃を造りやすくなります。マンガン鋼は混ぜられるボクの量によって性質を変えることができ、さまざまな場所で利用されています。


 とはいえ、合金の主役は26番、――おそらくすべての金属のなかで、もっともヒトに貢献している大物です。

 大昔からずっと、8番にチクチクいじめられてもちっとも根に持たない26番は、我慢強いと思います。



 ……ボクには、到底マネできそうにありません。



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