20.Calcium 【カルシウム】


 牛乳! ホネ! 背が伸びる! かもしれない!


 よっ、俺は20番。

 ニンゲンには、わりと馴染みのある元素だろ。

 だって、ニンゲンは大昔から俺を使ってたんだ。俺、っていうか、正しくは俺の化合物だけど。まず頭に浮かぶのは石材。贅沢な建物に使われてる大理石は石灰岩の一種で、神殿とかを造るのに使用されてるし、石灰岩を使った『しっくい』や『セメント』に近いものも、ピラミッドの時代から使われてる。石灰岩は俺と、6番8番との化合物で『炭酸カルシウム』、漆喰なんかは8番16番との化合物、『硫酸カルシウム』が主成分なんだってさ。


 建物に使うほかにも、学校の授業に使うチョークとか、校庭のに白い線をひく消石灰、あとはまあ、ドーブツの骨や貝殻なんかも俺の化合物だ。だからたぶん、俺のイメージって、白っぽい石とか、白い粉とか、そういう感じだろ?


 だけど単体の俺は、銀白色の金属なんだ!

 けど、『金属』の状態の、つまり単体の俺を見たことがあるやつは、きっとそんなにいないはずだ。空気中だとすぐ反応して『白っぽい化合物』に変わるから、俺のイメージはなんとなく『白っぽい石』『白っぽい粉』だし。けど、俺はれっきとした金属! 金属だからな! もちろん白っぽい化合物の中の俺も俺だし、大活躍してるけど、とにかく俺は金属だってことだけ覚えておいてくれよ。ちゃんとみんなに知っておいてほしいから、さ。


 俺の化合物の活躍はさっき言った通り、だけど金属の俺も、実はけっこう働いてる。金属として何かの材料になるよりは、どっちかっていうと、吸収剤?とかで、他の金属の精錬に使われることが多いけど。まあそれは性質上仕方ない。


 ていうか、俺がホントに必要とされてるのは、どっちかっていうとニンゲンとか、生き物の身体のほうだ。当然、骨としてだと思うだろ? だけどそれだけじゃない。俺はニンゲンの細胞を出たり入ったりして、筋肉や神経の情報を伝えて、活動できるようにしてる。えっと、つまり、ニンゲンが生きて、考えて、動くのに、俺は必要不可欠な元素だってこと。むしろ骨のほうがオマケで、細胞の中の俺が不足したときのための貯めてるんじゃないかって説すらあるんだ。な、俺って、けっこう凄くない?


 さて、次からは『遷移金属』、すっごく『金属っぽい』元素のグループだ。21番は有名とは言えないかもだけど、ほとんどのニンゲンがどこかで見たことあるはずだから、あいつの話をきいてやってくれよな!



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