CHAPTER―8
ユノが梯子を上っていくと天井に扉のようなものがありレバーを回し押し開けると星空が見えた、いつの間にか日が沈んで夜になっていた。
ユノは頭をゆっくりと出し周りを見渡すと遠くで先ほど撃ち落とした飛行機のようなものが黒煙を上げながら燃えているのが見えた。
「あそこにいけば生き残りがいるかも知れないから出口をここにしたのよ、ピッタシでしょ」
アリスが得意げに言う。
「あぁ、ばっちりだ」
人影が無いのを確認すると梯子を上り地上に出てもう一度周りを見渡したが人影のようなものは無いが近くの木の裏に身を隠した。
ユノは辺りを見渡して敵の仲間が駆けつけないか見たがその様子が無かった。
「墜落した期待の周りに兵士の姿が見えないって事は墜落したときに全員死んでしまったのかも・・・」
「そうかもしれないな」
墜落して炎上している機体を見ていると助かった人間がいるようには思えなかった、ユノは周りに気をつけながら近づこうとした。
「待って!!」
突然アリスが叫び驚いて足を止めた。
「何なんだよ」
「右の方何か動いているわ」
「右?」
右を見ると見覚えのあるローブを着る前のユノと同じ服装をした二人が走って墜落地点に近づいて行くのが見えアリスも気が付いたようで言った。
「あれってあなたを捕まえていた連中じゃないの?」
ヘルメットのレンズに拡大した映像が映った、そこにはユノを捕まえた兵士と同じ装備をした二人が映っていった。
「そうだな、お前の言う通りみたいだな、これであいつ等にお礼ができるな」
思わず笑いながら言い他にいないか見ていたが二人だけのようであった、二人は墜落現場に到着すると分かれて墜落した機体を覗くように周りを歩いていてユノが近くにいるだ何て考えてもいないようだ。
ユノは慎重に背中の零五式狙撃銃を音を立てないように前に回し膝立ちで構えてスコープを覗き照準を合わせると男が何かをに反応した。
スコープから顔を離し様子を見るともう一人の男が反対側から回ってきて合流し顔を振っている様子からすると生存者はいなかったようだ。
「殺すのは一人?」
アリスが尋ねてきたので答えた。
「いや、二人とも捕まえる、二人を尋問すれば情報の正確性が確かめられるからな」
「二人も急所を外して撃つような高度な事できるの?」
「別に片方は死んだってかまわないさ、やれるだけやってみるだけさ」
「ふ~ん」
納得したのかしてないのかわからないアリスの声が聞こえると墜落地点の二人が歩き出し、右側の男の肩に狙いを定めると発砲音が響いて二人は歩みを止めて手に持つ銃を構えた。
「当たってないわよ?」
アリスが呆れたように言う。
「俺じゃない!」
ユノは背中に冷たいものを感じ頭を低くして動きを止めて耳を澄ました。
「狙われてるの?」
心配そうなアリスの声が聞こえ、小さい声で肝を冷やしながら答えた。
「わからない」
発砲音が聞こえてこないのでユノは恐る恐る顔を上げて周りを見渡すと、先ほどまで二人だと思っていた墜落地点の奴等が四人に増えているのが見えた。
「四人になってるけど、さっきの発砲は誰がしたの?」
アリスが尋ねてくるがユノはスコープを覗いて二人の男を見ると二人とも大型の拳銃のようなものを持っているのが見え、四人で何か言葉を交わして頭を振るのが見え歩き出した。
「四人が歩き始めたわよ」
「わかってる、静かにしてろ」
ユノは返事をしてから呼吸を止めて手の震えを押さえスコープで先頭を行く男の肩に狙いをつけ引き金を引いた。
銃弾は先頭を行く男の肩に当たらず後ろの炎上する機体に当たり、四人はバラバラに逃げ始めた。
「ぶつけた時に照準がずれたんじゃないの?」
のんきにアリスは言うがユノはあせりながらも照準の狙いを逃げようとする兵士の腹部のど真ん中に狙いを変えてバラバラに逃げようとしている兵士を次々に撃ち全員が地面に倒れた。
「やった!、四人全員に当たったわ!」
アリスが喜んでユノもスコープから目を離して四人を見た。
「手ごたえは合ったが四人に当たったかわからん」
「爆発まであと六分よ、どうるすの?」
ユノは立ち上がり零五式狙撃銃のセーフティをかけベルトで背中に回しガバメント拳銃を取り出した。
「あいつらを捕まえるチャンスなんて無いんだ、さっさと捕まえて尋問して逃げるさ、それに後六分で爆発が起こるのならすこしは時間が稼げるだろ」
言い終わると全速力で走り出した。
「逃げたほうがいいんじゃない?、すぐに仲間が来るかもしれないわよ?」
アリスが嫌がるのでユノはすかさず言い返した。
「嫌ならここに置いていくぞ」
「嫌じゃないわよ、心配なの、もちろんあなたじゃな無くてわたしの」
アリスの愚痴を聞いていると墜落現場に近づき四人がうつ伏せに草むらに倒れ這って逃げようとしていた、どうやらユノの弾が当たり血で道ができていた。
ユノは四人を見渡せる位置の木の陰に隠れて様子を伺いながら叫んだ。
「動くな、武器を捨てて手を上に挙げるんだ!!」
四人は誰も武器を捨てなかった、さらにサブマシンガンを周りに向ける奴がいたのでユノはその兵士に向かって拳銃の引き金を三回引くと男は体をのけぞらせてからサブマシンガンを手から落とし動かなくなった。
「言う通りにするんだ!、俺はお前らの内の一人がいれば十分なんだ!、殺されたくないなら銃をさっさと捨てろ!!」
残りの三人に警告すると拳銃や身に着けていたアサルトライフルを血まみれの手で投げた。
それを見たユノは木の陰から出て一番近くの見慣れない服を着ている兵士に拳銃を向けると思わず言った。
「立場が逆になるとはな」
すると向けている兵士と別の兵士がユノを見て痛みに耐えてかすれる声が聞こえた。
「その声、お前チェンか?中にいるんじゃないのか?」
(俺の声が分かるってことはこの二人が俺をあの施設に連れて行ってくれたバカ共か、それにこいつの声には聞き覚えがある、確か俺を殴ったオースティンとか呼ばれてたな)
それには答えずユノは鼻で笑って拳銃を向けている兵士の腹部を蹴り飛ばすと兵士は苦痛の呻きを上げて体を折り曲げた。
「やめるんだ、死んでしまう」
様子を見ていたのかさらに別の兵士が起き上がって言ったが、その男の声は確かマイクと呼ばれていた男の声だ。
ユノはもう一度男の腹部を蹴ってから言った。
「動くなといっているんだ、次勝手に動いたらこいつを殺す、わかったな」
するとアリスが普通にしゃべってもオースティンたちには聞こえないのに小さい声で囁いた。
「撃たれた人を蹴るなんて、あなた容赦ないのね」
「三人いるんだ、一人が死んでもまだ問題ない」
ユノは小さい声で言うと今の会話が聞こえていないマイクがうつ伏せで両手を挙げながら叫んだ。
「わかった!、わかった!」
「俺の質問に答えろ!、お前たちの所属は!?」
マイクは撃たれた所が痛いのか何も言わないのでオースティンが代わりに答えた。
「アメリカ合衆国軍調査部所属だ」
オースティンが答えるとアリスが囁く。
「アメリカ合衆国軍調査部なんて聞いたことないわ」
無視して言った。
「お前たちの目的は何だ?」
「ロストテクノロジーの発掘、および調査だ」
「調査ね・・・」
言いながらユノは先ほどまでしゃべっていたが今はしゃべらなくなったマイクに近づいてしゃがみ込んでマスクを外した。
そこには前捕まった時に見た顔でこの辺りでは見かけないルーカスとは別の人種で肌が黒く浅い呼吸を繰り返している男だった。
「何をするつもりだ?」
オースティンが苦しみながら言うのでユノは黙って蹴飛ばしていた男の頭を拳銃で撃ち抜くと男は痙攣を始め、ユノは拳銃の弾倉をマイクから奪い交換した。
「余計な事はしゃべるな、つぎはこいつを殺すぞ」
ユノは立ち上がりオースティンに近づくとうつ伏せの状態で倒れているので蹴飛ばして仰向けにし、撃たれた所を探すとわき腹が赤く血で染まっている。
拳銃を持ち替えてアリスがいた施設の中で見つけて持ってきた刃が二十センチの黒いナイフを取り出すと炎上している機体の炎でナイフ表面を見ると光で反射しないようにつや消し処理がしてある様だ。
「お前たちは簡単に殺しはしないさ、世話になったからな十二分にお礼をさせてもらうよ」
「そんなことしてる暇な無いわよ、もう三分も無いわよ」
アリスが慌てて言う。
「そうか、残念だな」
ナイフをしまうと拳銃を再び取り出した、その様子をオースティンは黙って見ていた。
ユノはオースティンに拳銃を向けて話を続けた。
「お前たちの調査はテクノロジーの調査といっていたが、現地の人間の調査は行わないのか?」
「現地の人間の調査は武装がどのようなものかの調査を行う」
オースティンが苦しみながら答えた。
「本当にそれだけか?」
ユノはいってオースティンの頭に拳銃の狙いをつけるとオースティンは焦って叫ぶように話した。
「本当だ!、うそを言って何になるんだ!?」
引き金を引くと銃弾はオースティン頭の横十センチの地面に穴が開いた、オースティンは恐怖で小便をもらしズボンにシミが広がっていくのが見えた。
「次は当てるぞ!、本当のことを言え!」
ユノが念を押すために叫ぶと震えた声でオースティンが叫ぶ。
「待ってくれ!、思い出す!、思い出す!」
「早くしろ!、十秒以内に答えろ!、答えなければお前を殺す、十、九、八・・・」
秒読みは続きオースティンはさらに叫んだ。
「やめてくれ!、お願いだ!、やめてくれ!」
「五、四、三」
狙いをオースティンの頭につけて声のトーンを変えずに続け、オースティンは逃げようと必死に手足をバタつかせたが血ですべるのか力が入らないのかわからないがその場から動かなかった。
「待った!、思い出した!、思い出した!、言うからやめてくれ!」
「ほんとだろうな!、言ってみろ!」
秒読みはやめたが、拳銃はまだオースティンの頭に向けている。
「拳銃をどけてくれ、いつ撃たれるか心配で考えがまとまらない」
「贅沢な奴だ」
ユノは拳銃を持ったまま手を下ろしたがすぐに撃てるよう指は引き金にかけたままであったがその様子を見て安心したのかオースティンは呼吸を整えて言った。
「確かに俺がさっき言ったこと以外にも現地の人間を捕まえて情報を収集することはある」
「その時捕まえた人間は?」
「男なら殺すか、現地での調査員にするかだな、女ならそのまま捕虜として連れ帰り男の相手をさせる」
「捕まえるときはどうするんだ?」
「夜や一人になった時に捕まえるんだ、そのほうが騒ぎにならないからな」
「そうだな、一人くらいなら居なくなっても殺されたか奴隷商人に捕まったか村から逃げた位にしか思わないからな」
ユノは一人で納得をした。
「なら最後の質問だ、お前たちは子供をさらうのか?」
「子供?」
先ほどまで黙っていたアリスの声が聞こえたが、無視するとオースティンが答えた。
「子供なんて捕まえても役に立たないから捕まえない、俺の知る限りではない」
「そうか・・・・」
ユノは話を聞き終えて銃口をオースティンの顔に向けた。
「知ってることはしゃべったんだ!、助けてくれ!」
その時、空で何かが回転する音が聞こえるとユノとオースティンを光が照らし思わず拳銃を持っている腕で目を隠した。
「そこの二人銃を降ろすんだ、さもなければ発砲する!」
声のする光りの元を目を庇いながら見ると墜落している機体と同じヘリのようなものがプロペラを回転させ、サーチライトで照らしていた。
「オスプレイの見たこと無いタイプね」
アリスが呟いた。
「オスプレイ?」
あれが施設の中で見たのかと一瞬思うとオースティンが叫んだ。
「俺は仲間だ!、早く助けてくれ!、負傷者がいるんだ!、それに今拳銃を持っているのは敵だ!、殺せ!!」
「武器を捨てるんだ!、さもなければ射殺するぞ!」
オースティンの声は届いてないがオスプレイからの声は拡声器で大きくなっているのでオスプレイの飛行音の中でも確実に聞き取れていた、ユノは仕方なく拳銃を投げ捨て両手を挙げた。
「そのままじっとしていろ!」
オスプレイから聞こえると機体の横の扉が開きロープが垂れ兵士たちがそれを使い降りてきた。
「アリス、爆発まで後何分だ?」
「後、三十秒よ」
「ここは安全なんだろうな?」
そういうとアリスは少し黙ってから言った。
「安全だけど爆風がきて吹き飛ばされるかもしれないわよ」
アリスとユノが会話をしている間にオスプレイから五人の兵士が降りてアサルトライフルを周りに向けて警戒していた。
「早く来てくれ!、仲間が撃たれてるんだ!」
オースティンが叫ぶと二人のオスプレイから降りてきた兵士がこちらに向かって前進してきた、その服装は施設の中で見た兵士と同じ黒い服を着ている。
「全員命令するまで動くんじゃない!」
「俺はアメリカ合衆国軍調査部所属だ!、こいつを早く捕まえてくれ!」
オースティンが血に染まった手でユノを指差して言うのでユノも負けじと言った。
「俺がアメリカ合衆国軍調査部所属だ、そいつは嘘をついているんだ!」
「そんなうそ通じないわよ」
アリスが口を挟んできたがオスプレイから降りてきた兵士はユノとオースティンの二人に怒鳴った。
「二人とも黙れ!、取り合えず二人とも拘束しろ!」
もう一人の兵士が近づいてくるとアリスが小声で秒読みした。
「五、四、三、二、一」
兵士がユノの目の前に来た。
「〇」
アリスがいい終わるとすさまじい爆発音と地面が揺れるのと同時に崖の方からすさまじい粉塵が舞い上がり爆風が襲ってきた、兵士やオースティンたちは驚いて思わず爆発した方を見て固まったが、ユノは知っていたので素早く黒いナイフをローブの下から取り出した、目の前の兵士は崖の爆発を見てユノに背を向けているので後ろから口を押さえ悲鳴を出さないようにし背中から心臓を突き刺すと体を震わせた。
ユノは兵士の持っているアサルトライフルを掴み目に前にいる兵士に向けて引き金を引くと頭に銃弾が当たり赤白い脳みそを撒き散らしながら倒れた。
発砲音でオスプレイから降りていた兵士達も事態に気が付きこちらに振り返ったがユノの方が早くアサルトライフルの引き金を引き兵士たちは銃を構えながら草むらに倒れた。
「オスプレイは!?」
アリスの声で上空を見るとオスプレイは爆風で左右に揺れライトの明りはユノを照らしていなかった。
「逃げるなら今よ!」
「言われなくても用が済んだから逃げるさ!!」
兵士の背中からナイフを抜きアサルトライフルを取り上げると用済みのオースティンに狙いをつけた、オースティンは殺されるのを受け入れたのか気絶しているのかわからないが動かなくユノは引き金を引いた。
がさっきまで倒れていたマイクがいつの間にか立ち上がりユノに掴みかかってきたので銃弾はオースティンから外れたが負傷しているために力が弱くアサルトライフルを振り回すとそのまま倒れて動かなくなった。
「死んだふりをしてればいいものを」
ユノはマイクに向かって引き金を三回引くと胸に三箇所穴が開き血が溢れ出てきて動かなくなった。
すると、オスプレイから降下した生き残りの兵士たちが撃って来た。
「くそっ!!」
ユノは反撃をしながら林の中に逃げ地上に上ってきた梯子の穴に逃げ込み蓋を閉めた、こうすればしばらくは発見されないだろし安全な場所まで逃げ切ることができる。
「死ぬかと思ったわよ」
アリスが安心したのかため息混じりに言う。
「あいつ等はもう用なしだ、さっさと逃げよう、他の安全な出口はどこだ?」
ユノはアサルトライフルと零五式狙撃銃を背中に担ぎながら梯子を一段一段降りた。
「あなた、もしかして子供を探しているの?」
アリスが遠慮がちに聞いてきた、ユノは少し考えて先ほどの会話を聞いているのならごまかしても意味が無いと思い本当のことを話した。
「正確には違うな子供を攫った奴を探してる」
「けどさっきの会話の内容じゃ、人が居なくなる事がよくあるみたいなこと言っていたけど・・・」
「そうだな、人がいなくなる事はよくあるが、俺の妹をさらった奴を俺は許すつもりは無い、絶対に探し出し殺してやる、そのためなら他の奴等がどうなってもかわまない」
ユノが話すと少しの間アリスは黙ってしまったが言った。
「わかったわ、あなたは妹で私は体、二人とも探し物があるから協力するということね、いいでしょう」
「ただし」
ユノが口を挟んだのでアリスが聞いた。
「ただし?」
「俺の命令に従ってもらうぞ、危険で死ぬのは俺なんだからな」
するとアリスが声を荒げて言う。
「それは無理だわ、あなたが死んだら私だってどうなるかわからないんだからあなたの命令をはいそうですかわかりました、なんて聞けないわ」
アリスが言い終わるとタイミングよく梯子を降りて扉の外に出ると先ほど乗った乗り物が見えユノとアリスは言い合いながら乗り物の進行方向に向かって歩いた。
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