02 The east of the garden of Eden
令が土間から庭へ走り出たところで、開に呼び止められた。
「レイ、どこに行くんだ。生物学概論のレポート、まだ終わってないだろ」
庭の踏みしめられた土の上で、令は足を止めて振り返る。土間の奥に続く八畳間から呼びかける開の姿は、そこからは見えない。
「本はもう飽きたよ。ここからは実践さ。山に行くよ」
開が障子扉を開けて、縁側に顔を出した。縁側の下に放り出してあった草履を見つけると、よいしょと小さく声に出しながら庭に下りる。目の前に立つ令の足下に、鶏が寄ってきていた。
「今から山へ? もう午後だぞ。危なくないか? それに先生になんというんだ」
令が足下の鶏に軽く蹴るような素振りを見せると、鶏は小さく鳴きながら走り去った。
「また兄さんの 、危なくないか? が出たね。先生はこんなことで叱るなんてしないさ。大丈夫だよ。それに、少し遅い時間じゃないと見られないヤツもいるんだ」
開は令の向こうに広がる山々を見つめた。低い山の連なりが濃い緑を湛えて、ぐるりと家を囲んでいる。空はうっすらともやがかかったように白く、決して天気がいいとはいえない。
藁葺きの大きな屋根を持つ、山の中の農家。庭から見渡せる範囲に他に家は見えない。
このあたりでは、夜は本物の闇となる。開には空のもやを通して、その向こうの夜が透けて見えるようだった。
そのとき遠くから、ごーんごーんという響くような低い音が聞こえてきた。開が頭を音の方角に向ける。表情がぱっと明るくなった。
「あれは、伐採機の音だ。そうか、今日から伐採がはじまったんだ」
開も令も、伐採が午前の早い時間から行われていることに気がついていなかった。
ふたり共に期日の迫ったレポートに追われて、連日の夜更かしが続いていた。そのために、講義が休みの今日は午前中いっぱい寝ていたのだった。
昼になってようやく起き出し、開が本を開くと同時に部屋を取びだした令を、開が呼び止めたのも当然だった。
令も音の方角に目を向ける。しかしその表情には開のような明るさはない。その音は動物を恐がらせ、隠れさせるのだ。
「兄さん、伐採機を見たいって、前からいってたね」
つぶやきながら、令はため息をつく。
「あの音は、まずいなあ」
令のつぶやきは、開の耳には入っていなかった。そうだ、こんなことで先生は叱りはしない。
「よし、レイ、僕も行く。準備してくるよ」
草履で土間の奥に駆け込む開を眺めながら、令はまたため息をつく。
自分でいいはじめたことだから仕方がないが、まさか兄がいっしょに来ることになるとは思ってはいなかった。もう一度ため息をつきながら、令は重低音を響かせ続ける音の方角を見つめた。
着の身着のままで出かけようとしていた令も、開の様子から伐採現場まで行くことになるかもしれないと思い直し、それなりの身支度を整えた。
長袖の厚手のトレーナーとジーンズ、そして底のしっかりとした靴。懐中電灯などを入れたバッグを肩にかける。開も同じような服装と装備を整えていた。
ふたりは家から続く坂道を下り、広がる田畑を横切る細い農道を歩きながら、まだ食べていなかった昼食をとった。
急いで作った握り飯だ。まだ暖かい握り飯を頬張りながら、予定とは違うけど伐採機を見るのも悪くはないかなと、令も思いはじめていた。
田畑を過ぎ、農道が山の麓に差しかかると、空気がわずかに冷えはじめて緑の匂いが強くなった。
やがて道はふたつに分かれる。ひとつは山の麓をぐるりと回る道。もうひとつはこれから向かう、山へと入る道だ。
その分岐点に、凛が立っていた。
長袖の赤いトレーナーに細身のジーンズ。小さめのリュックサックを背負い、腕組みをしたままいらいらしたように片方のつま先をとんとんと地面に打ちつけている。
肩にかかるくらいの髪が両頬を隠しているが、その奥でこれ見よがしに頬をふくらませていた。
開と同い年の凛は、令よりもふたつ年上になる。
「カイ、レイ、遅い」
分岐点の脇に立つ大きな樹の陰に身を潜ませていたために、ふたりの目には凛がいきなり現れたように見える。
「リン、どうして」と開が口を開きかけたとき、令が「あっ」と大きな声を出した。
「忘れてた、ごめん」
開が、え? と令を振り向く。凛がぽかんと口を開ける。
「そういえば昨日、リンを誘ったんだ。今日のお昼、山に行くけどって」
「私のこと、忘れてたんだ。相変わらずだね、レイは。お弁当、作ったのに」
凛はつかつかとふたりに歩み寄ると、開の腕を取った。そして手を握ると「行こっ」というなり、開を引っ張って山への道へ入って行く。少し歩いたところで振り向き、凛は令にあっかんべえをした。
令は苦笑いをしながら、ふたりの後を追った。
開は凛に手を握られて引っ張られながら、凛は何人分の弁当を作ったのだろうと考えていた。
大きな樹木に囲まれ、湿り気を帯びた落ち葉や枯れ枝に埋もれた細くなだらかな上り坂を三十分も歩いた頃だろうか、目の前の視界が突然開けた。樹木の並びがそこで途切れ、大きな広場になっている。
数年ごとに行われる森林伐採の、前回の現場だった。
山の緩やかな斜面から樹木がなくなり、ひざ上のあたりまで伸びた雑草が野球場ほどの面積一面に生えて、風に柔らかな緑色の穂先を揺らしていた。
凛が草原の中に走っていく。
「わあ、気持ちのいい場所」
両手を広げてくるりと回りながら大きな声でいった。
「さあ、野原へ行こう!」
開と令も、草原に足を踏み入れる。
「なに、それ」
令が草の間を歩きながら聞いた。
「聖書の中のセリフだよ。カインとアベル。この前の先生の講義、聴いてなかったの?」
「ふうん」
さして興味もなさそうに令がつぶやく。生き物以外にはあまり関心がない令は、その講習もまじめには聴いていなかったようだ。
「天国って、きっとこんな場所なんだよね」
凛がつぶやく。顔を上げて、手を広げたまま大きく深呼吸をした。
「天国って、もっとなんというか、華やかな場所って感じがしない? リンゴとか実ってたりするし」
開も凛の横に立ち、いっしょになって深呼吸をした。
「僕は、浄土というイメージかな。物静かで落ち着くという意味で」
山の上方から、ごーんという伐採機の重低音が聞こえてきた。
その音に、凛と開は顔を見合わせる。
「天国や浄土にあんな音はしないよね」
笑いながら凛は、肩にかけたバッグを手に取った。
「ふたりはごはん食べたんだよね。私はおなか空いた。この天国でお弁当をいただきます」
凛はそういうと、広場の中で腰を下ろした。開と令は顔を見合わせてから、凛のそばに同じように座り、腰に取りつけていた水筒を外した。
「せっかくだから、もらおうかな。弁当」
令が、凛の持ち出した弁当をのぞき込む。その弁当は、やはり握り飯だった。
ただ、さっき開と令が歩きながら食べた握り飯に比べると、米の粒が倍ほどの大きさだ。
品種改良前の米だった。改良前の米は今でもそれなりに食べられている。粒が大きく扱いにくいために普段はあまり使用されなくなってはいたが、やはり栽培が改良後の米に比べれば簡単という利点は消えていないし、味も悪くはなかったからだ。
「僕は、こっちの方が好きだなあ。やっぱり、自然のままが一番だよ」
開が凛の作った握り飯をひょいと持ち上げていった。そして、一口かじる。
「うん、うまい」
塩味の効いた握り飯は、さっき食べたばかりとはいえ、やはりうまいのだ。
凛と令も、握り飯をつまむ。
握り飯は全部で五つだった。それが三人分なのか、あるいは二人分なのかは開には判断できなかったし、それを尋ねようとも思ってはいなかった。
握り飯が乗った容器の下には、さらにもう一つ、おかずの入った容器があった。凛が、その容器をふたりに差し出す。
「おなかいっぱいでしょうけど、責任持って食べてしまってね」
おかずは玉子のだし巻きと、焼き魚の切り身だ。切り身は十センチ四方ほどもある。凛の性格を体現したかのようだ、と令は思う。
「これ、なんの魚?」
令の質問に、凛はそっけなく答える。
「イワシだよ。イワシの切り身。おいしいんだから」
やはり改良前のイワシだった。開はその切り身を指先でつまみ上げて一口かじる。自分は凛と好みが合っていると思う。開もだいたいにおいて改良前の方が好きだった。
そのとき、令がいきなり立ち上がった。
「どうしたの」
驚いて、凛が中腰になる。
「しっ」と、令が唇に人差し指をあてた。「ヤツらだ」
開と凛が四つん這いになり、草の陰に隠れるようにしながら令の見ている方向を眺める。
雑草の穂先が作る境界線から上に、いくつもの黒い塊が動くのが見える。
黒い塊は、上方向の森から湧き出すようにして、雑草の広場に下りてきていた。
「すごい。上の森から逃げてきたんだ」
令の声が震えていた。
図鑑でしか見たことがなかった生き物が、今現実に目の前にいる。
それは、蟻の群れだった。蟻の大群が移動しているのだった。
図鑑で見る蟻の絵からは、その大きさまでは把握できない。体長100センチと書かれてはいるものの、実物を見るまではその塊感はわからない。
令は興奮していた。開と凛のように草陰に身を潜めることさえ忘れたかのように、広場に棒立ちになって群れを眺めていた。
広場を横切ろうとする蟻たちの身体は、その下半分が草に隠れて見えない。頭と胴の上半分が、草の海に浮かぶ黒い小山のようにゆっくりと揺れながら流れているようだ。
それが、今では広場の半分以上を覆うくらいに広がっていた。
森から流れ出てくる蟻の群れには、途切れる気配がない。さらに大量の小山が樹木の隙間から流れ出してくる。
群れが広場の三分の二くらいを埋め尽くしたあたりで、開が小さく叫ぶ。
「レイ、逃げなきゃ。危ないぞ」
凛も怯えた表情で小さくうなずく。
「いや、だめだ兄さん。動かない方がいい」
そういいながら、令もその場にしゃがんだ。
「ヤツらに攻撃性はないよ。じっとしてれば、俺たちを避けて通り過ぎてくれる」
「ほんとに大丈夫なの?」
蟻に聞かれるのを怖れたような小さな声で凛がささやいたとき、令のすぐ後ろの草むらががさがさと音をたてた。
光沢を持った黒い樹脂の塊のような、蟻の頭が見えた。ひと抱えもありそうな大きさだ。
凛が、叫びそうになる口に掌を押しつけて息を止める。
令の真横を小刻みに頭を動かしながら、蟻が通る。
頭部先端から生えた触覚が開の脚に触れ、蟻がぴくりと頭を動かして開を睨む。その眼は焦点が定まらない無数の複眼だ。開はその瞬間で動きを止めて、凍りついた。
しかし、蟻の頭部についたのこぎり状の顎が動くことはなかった。
蟻はがさがさと六本の脚を動かして、器用に三人を避けて通り過ぎていった。
そしてすぐにまた蟻が現れる。しびれたように動かない三人の横を、蟻が次々に流れていく。
群れの大部分が通り過ぎるためには、それから一時間ほどが必要だった。
三人はただじっとその場でしゃがみ込んで流れていく蟻を眺めていることしかできなかったが、令だけは眼を輝かせ、来ては去る蟻の一体々々を嬉しそうに観察していた。
令のいった通りに、蟻が三人を攻撃することはなかった。
草原をかき回すようながさがさという音が小さくなり、やがて風の音と、忘れていたようにときおり聞こえ出す伐採機の音が再び耳に届くようになったとき、令が立ち上がった。
「すごい、すごいすごい」
令が叫びだし、その場で飛び上がる。
「な、兄さん、危なくなかっただろ。すごかっただろ」
反論したいことはありすぎるくらいにあった開だが、とても今は令と口論できる状態ではなかった。
先生ならどういうのだろうか。先生なら、どう令を叱るのだろうか。それとも、叱らないのだろうか。
ふと凛のことを思い出し、もしや恐怖で立ち上がれなくなっているのではと彼女を見やると、凛は令に続いてすぐに立ち上がり、膝の汚れをぱんぱんと手で払っている。
「少し怖かったけど、見慣れるとかわいいのかも」と、凛は事も無げにつぶやく。
凛に力を借りて令に少しは反論しようかと思った開だったが、凛のその姿に完全に機会を失い、仕方なくゆっくりと立ち上がった。
害はないと話した令は、正しかったのだ。
そのとき、声が聞こえた。
「レイ。聞きなさい」
突然の声に令ははっとする。そして首からかけたネックレスをシャツの首元から引っ張り出し、そのペンダントヘッドを掌に乗せた。
言葉を話すようになった頃から常に、肌身離さずにつけているペンダントだ。
掌に乗せたペンダントヘッドは、小さなどんぐりだった。開と凛も、同じように首に掛けたネックレスのどんぐりを取り出した。
「レイ、聞きなさい」
もう一度、声が聞こえた。声は令の掌に乗るどんぐりから発せられているのだった。開と凛のどんぐりからも、同じ声が発せられている。
「先生、俺、とうとう本物の蟻を見たよ」
令がどんぐりに向かって話す。
「望みがかなったんだね。いいことだ。ただやはり、少し危険だった。生物学を学ぶ君なら、それはわかっているね」
令が言葉に詰まり、口をつぐむ。
「この地域に住む蟻は、非常に社会性が強い種類だ。したがって群れ全体が行動しているときに個体単独での攻撃行動はないと考えていい。
君はそれを知っており、だからこの場所が群れの進行方向だとわかってからも、離れることをしなかった。そうだね?」
令は少し唇を尖らせて、小さく「はい」と答える。
「正しい判断だ。しかし、それは避難行動がそれしかない場合のみに、許される行為でもある。わかるかい」
令が俯いて、また小さく答える。
「・・・・・・はい」
「君は、蟻の社会性がどれほど高度でも、個体がそれに反する行動を取る場合があり得る、ということも知っている。
つまり、君たちの真横を通り過ぎたあの蟻が突然君たちを攻撃するという可能性は、限りなくゼロに近いがゼロではない、と知っていたにもかかわらず、君は優先するべき避難行動を採らずにカイとリンを危険に晒した」
「・・・・・・その通りです、先生。間違っていました。俺は好奇心を優先してしまった」
「うん。わかってくれれば、それでいい。結果論だが、間近で蟻を観察できたのだ。よかったね、レイ」
先生は、いつも優しい。間違ったことをしたときも、決してすべてを否定しようとはしない。公平に、きちんと見てくれている。
子どものときに癇癪を起こして夜の山に走り込んだときもそうだった。はじめてトカゲを殺したときもそうだった。はじめてレイとつかみ合いの喧嘩をしたときも、そうだった。
開はどんぐりから滲み出てくるような、先生の静かな声が好きだった。どんぐりからの声だけの先生。
本当の姿には一度も会ったことはないが、そういうものだと思い、もう疑問に思うことさえない。
先生はいつも近くにいて見守ってくれている。先生がそばにいると思えるだけで、開は安心できたのだった。おそらく、令と凛も同じだろう。
「カイ、レイ、リン」
先生が三人に呼びかけた。
「今日はもう山を下りなさい。カイ、気がついたかい。もう伐採機の音は聞こえないだろう? 今日の作業は終わったみたいだよ」
先生の話すとおり、すでに伐採機の音は聞こえなくなっている。風で揺れる草々の柔らかな音だけが、静かな広場に満ちていた。
ここまで来たのだから、できるなら動いていなくてもいいから伐採機を見に行きたいと開は思ったが、しかし先生のいうことに逆らってまでというほどではない。
伐採は今日で終わりではない。おそらくまだ数日は続くはずだ。機会はまたあるだろう。
「わかりました、先生」
開は納得したということを示すために、にこりと笑顔を作って掌のどんぐりを見つめた。先生には見えているはずだ。
「来てよかったあ。蟻って、あんなにすごいものだと知らなかった」
凛が屈んで、開いたままになっている弁当容器を片づけながらはしゃいだ声を出した。
「カイ、また来ようよ。レポートやってからだけどね」
開、令と同じく、凛もまたレポートに追われているのだ。
よし、とつぶやいて凛が立ち上がる。バッグを肩に掛けてデニムのお尻をぱんぱんとはたいた。
「帰るよ。カイ、レイ」
凛の言葉をきっかけにして、三人は来た道を戻り始めた。
まだ暗くなる時間ではなかったが、空気はすでに日中の最高気温を過ぎてゆっくりと下がりはじめている。山はすでに夜の準備をはじめていた。
細い山道には街灯はもちろん、灯りとなるような設備は一切つけられていない。やはり、安心のうちに山を下るにはこの時間が一番よかったのだ。
あのとき無理に伐採現場まで行っていたら、帰りは暗闇の中で懐中電灯の光だけを頼りにしながら不安の中で歩くことになっていただろう。
目の前で見た蟻についてその生態や社会性の感想を話し合いながら歩く令と凛のうしろで、開は改めて先生の正しさを実感していた。
「ああ、集会場の図書室、はやく全部見させてくれないかなあ。そうしたら、もっと蟻のことも調べられるのに」
凛と並んで歩きながら、わざとらしい口調で令が言う。先生が聞いているかもしれないと知っていての、ちょっとした皮肉だ。
「そうだね。私も早く見たいなあ。あとどれくらい待てばいいのかな。せめて、いつ見せてくれるか教えてくれればいいのにね」
凛も、令の皮肉に気がついてわざとらしく話を合わせる。
集会場とは、三人が学校代わりに時折通う施設のことだ。
そこには、読み切れないほどの本が収蔵されていると聞いているが、三人はまだそれを見たことがない。
そのとき、三人の胸元から再びどんぐりが声を発した。
「カイ。聞こえているかな」
開が呼ばれたにも関わらず、令と凛がびくっとして立ち止まる。先生がふたりの皮肉に反応したかと思ったのだ。
開の目の前で立ち止まり、心持ち肩をすくめているふたりの背中に思わず笑いそうになった開は、立ち止まってから一呼吸置いた。
「はい、先生」
「今夜、街に来てくれないかな。街まで来てくれれば、わかるようにしておく。夕食はこちらで用意するよ」
先生は、令と凛の皮肉が聞こえていたのかいないのか、それについて触れようとはしない。
「ひとりでですか、先生」
「うん。ひとりで来てほしいんだ。話したいことがある」
図書室の皮肉についての話題ではないらしいと、令と凛が振り向く。
「どうして私たちもいっしょじゃいけないんですか。私も街で食事したいなあ」
凛が少し不満そうに頬を膨らませた。
「そうだね。俺も街での食事がいいな」
令も続けていうが、その表情には微笑みが浮かんでいる。本気でいっているわけではないのだ。
令も凛も、先生のいうことに逆らう気はなかった。
「わかってくれるとうれしいが、カイに話があるんだ。頼むよ。君たちふたりの街での食事は、近いうちに実行させてもらうから」
先生は少し困ったような口調で話した。
「わかりました、了解です。私は、遊びに行かずにレポートに集中します」
凛が弾むようにいう。
「そのかわり先生、街での食事、約束ですよ」
「もちろんだ。私は、約束は守る」
「じゃあ俺も、家にこもってレポートかな」
「ありがとう。レイ、リン。図書室の件については、検討しておく。では頼んだよ、カイ」
先生はそう言うと、どんぐりから消えた。
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