やめた
翠幽月
優等生は賞味期限切れ
行きたい場所がある
遠いところだ
その気持ちが生まれるまで
明日世界が終わるとか
人類滅亡の危機だとか
そういった類のことを期待して生きていた
世の中はあまりにもつまらないものだと、感じていた
あり得ないほどに退屈だった
どうせつまらないならば、批判されることのない
優等生を演じようと思った
でも、優等生を演じても
生まれて、成長して
食べて、寝る
そして、命を終える
その一連の流れを変えることはできなかった
退屈と、虚無感がいつも心の中にあった
最初、私は病気になったのだと思った
子供の好奇心と同じだ
友達も、家族も、居場所もある
それなのに、なぜ他のところに行きたいと思ったのか
なぜ、こんなにも退屈なのか分からなかった
あるときを過ぎれば、自動的に脳内から削除されるとも思った
それまで、ずっと澄ました顔で優等生を演じていた
だけど、日々を重ねるたびその退屈さは増して
あるとき、行きたいところが見つかった
そして、行く場所が遠いところだということが分かってきた
表現するということは
書くということはそういうことだと思った
それを目指そうと思った時、
私は狡猾になろうと思った
ずるくなろうと思った
そうしなければ、辿り着けないと思ったから
恐らく、辿り着けないこともあるだろう
あっという間に忘れ去られる
どんなにいい作品を書いても
どんなに心響く言葉を綴っても
才能の差がものを言う
残酷で、どうしようもない世界だ
だから、もうやめる
今まで、優等生とか
真面目な奴を演じてきた
何かに身を任せていた
それはもう賞味期限切れだと
はっきり言おうと決めた
私は、もうやめる
優等生としての私は
賞味期限が切れてしまった
もう二度と食べることはできません
やめた 翠幽月 @long-sleep
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