第24話冒険者ギルド本部へ素材を納品してみる 異世界テンプレ発動

 朝から晩までみっちり兎狩りなんて想像して無かったけど、これはこれで良い経験になった。

 狩りで手に入れた素材を納品する事にした俺達は、冒険者ギルドに行く事を決めた。

 しかし、2800匹分の素材とか、価格破壊物だが、どうなるんだろうか?プールしておいて次々に流すといった感じがベターなんだろうけど....聞いてみるか。

 


 冒険者ギルド本部は、王都中央広場前にある。

 冒険者ギルドは、依頼の期限であったり、緊急性を要する物があったりで、閉めるわけにはいかないので、基本的には24時間営業状態である。

 なかなか大きな建物で、木造建築で3階建てである。しかし、木造と侮るなかれ、全ての木材に耐火エンチャントは当然として、耐久性・柔軟性・自己修復の エンチャントまで掛かっている。超豪華仕様だ。

 広さも結構な敷地面積で、500坪位はあるだろうか?この立地でこの土地を所有出来るというのは凄い事だ。1階は低ランクの受付窓口や素材の保管・解体・加工部屋、2階は高ランク受付窓口と事務室や来客用の客間・住み込みで働いているギルド員の部屋があるそうだ。3階はギルドマスターの部屋と持ち出し禁止書類や魔法書・魔道具等の貴重品が管理されている。

 


 ギルドマスターは【ガゼル】という元Sランク冒険者らしいが、王都でも5指に入る程の凄腕らしい。冒険者をやっていた頃は、単独でAランクダンジョンを踏破するなんて事も、実際に記録されている実績に載っているらしい。


 Aランクダンジョンの最下層にいる様なボスはレイド級だろうから、それを単独撃破となればどれほどの実力かというのが想像できるだろう。

 実力が隔絶してないと不可能な偉業である。


 実際に会って手合せしたい所だが、会うのは難しいだろう...LV1の冒険者だからねぇ。

 (マスター、とりあえずは冒険者登録する所からでどうでしょう?)

 うむ、異議無し!...なんだけど、建物裏手の酒場に繋がっているらしく、そこで食事が出来るそうなので、先にそっちへ行きましょう!1日狩りをしていたから、不味い携帯食料を一つ齧っただけだよ!理由が無い限りはもう食べたくないな!

 

 カロリーバーだったが、ボソボソしていて味がほとんどしない上に、口の中がパサパサになったよ!もうパサパサだよ!パッサパサ!!!誰が責任とってくれるの?ってくらいだったよ。

美味しい携帯食料も作らないといけないね!


 酒場に着くと、もう21時を過ぎた良い時間なので、こちらも賑わっていた。

 お酒や料理を運ぶウェイトレスが忙しく動き回り、注文を取って回っている。プレイヤーの姿だけでは無く、NPCの冒険者や町の人間も沢山いて、それぞれが楽しそうに話をしている。


 「いらっしゃいませ~♪お二人ですか?こちらにどうぞ」

 さすがベテランだな。俺達二人が入店して直ぐに声を掛ける速度...良く勉強している。


 案内された席でメニューを眺める。

 「マスター、メニューの半分近くがラビットですが....皮肉ですね」

 「まぁ、安くて・美味くて・沢山獲れると三拍子揃っていれば、こうなるのは自明の理だな」

 「そうですね。あ、このビッグラビットのステーキとマスターのお勧めサラダセットというのが食べたいです。」

 「なら俺は、マスターラビットの腿肉グリル(スパイシーソース)と本日の特選野菜サラダセットを頼んでみよう」


 ワクワクしながら待っているエリーを見ていると、AIとはいえ、やっぱり普通の女の子じゃないかと改めて思う。こちらの世界での人生も本物なのだ。


 「お待たせしました。先にサラダからお出しさせて頂きますね」

 並べられたサラダは、どちらも瑞々しく新鮮な野菜がふんだんに使用されたサラダだった。

 シャキシャキと歯ごたえのある葉野菜や、細切りにされた根野菜にかけられた、酸味のあるドレッシングが後を引いて、フォークが止まらない。


 「ん~!!マスター!とっても美味しいです!!」

 「ああ、これだけで食事として満足できる一品だね。女性にも人気が出そうだ」

 「失礼します。こちらがメインディッシュになりま~す」


 ジュワ~っと熱された鉄板の上で弾ける脂と、立ち昇るソースの香ばしい匂いが食欲をそそる。

 エリーの頼んだビックラビットのステーキは、霜降り肉のように柔らかく、ナイフがスッと抵抗なく肉に沈んでいく。

 切り口からドバっと広がる有りえない程の肉汁に思わず喉が鳴った。


 「マスター、あーんしてください!はい」

 切ったばかりの肉を一切れ刺すと、フォークを俺に向かって伸ばしてくるエリー。

 「ん、あーん...ングング...うーまーいーぞー!!!!!」

 

 噛む度にジュワっと広がる肉の旨みと脂の甘みが堪らない、血抜きがしっかりと行われており、臭みを感じさせない。丁寧な下ごしらえがされているのだろう。

 現実では、ウサギは小型なので、弾力がありクニュクニュとした触感の肉だが、このビッグラビットは大型種で良く肥えているからか、柔らかくて食べ易いものGoodだ。


 腿肉のグリルも香辛料の良く効いたスパイシーな香りがする。

 「じゃあ、エリーにもお返しな!はいよ」

 小さく切り分けた肉をフォークに刺して、口に運んでやる。

 「.....ふぁあああ!美味しいです!マスター」


 うん、確かに美味しい。じっくり火を通した後に、外側をパリッと焼かれた腿肉はジューシーで食べ応えがあった。胡椒のようなピリッと香る大粒の果実のスライスや、ナッツのような香ばしい木の実を砕いた粒粒がトッピングされていて、食感も楽しめる逸品だな。


 セットでついてきたパンも肉やサラダに負けていない。

 バゲットを斜めに切り分けた、適度なサイズのパンに特製のガーリックバターを溶かして軽く炙ってあるのか、サクサクしながらも、中はしっとりとしているパンは旨みたっぷりだ。

 

 肉・サラダ・パン・サラダ・肉・パンと次々に口に運んでいると、あっという間に無くなってしまった。大満足だ!これなら毎日来てもいい。

 

 「サービスのデザートです。あちらの方からですよ」

 ウェイトレスが向いた先には、50代半ば位だろうか、眼帯をしたシブイおっさんが手を振っていた。飄々としているが、とんでもない実力者だ。

 あちらも、俺が気付いたの悟ったのかニヤリと笑った。


 リンゴのような果実を輪切りにして、シロップにつけた物をキンキンに冷やしたものだった。

 (わふーでは無い)→クドい甘さを想像したが、さっぱりした甘さにシャクシャクとした食感が生きている美味しいデザートだった。リンゴというか、梨に近い味だったな。


 ウェイトレスを呼んで会計を済ますと、お返しにエールを一杯返しておいてくれと多めに金を渡しておいた。

 「ありがとうございました!」

 元気良く送り出してくれるウェイトレスに見送られて、冒険者ギルドの受付を目指す。


 「美味しかったですね!マスター」

 「そうだな、他の料理も食べたくなったよ。また来ような!」「はい!」


 ちょうど受付も空いたらしく、順番待ちしなくても良いみたいなので、カウンターに向かう。

 「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件ですか?」

 微笑みをこちらに向けているのは、獣人の女の子だった。ネコミミがピクピク動いていてとても愛らしい...モフモフしたくなった。名札を見ると、『ミルク』だにゃん♪と書いてある。

 なるほど、とっても可愛いですね!分かります。

 シルクの様な髪質とミルキーホワイトのネコミミに合っている。お母さん・お父さんは分かってらっしゃる。


 「初めて来たんだけど、登録ついでに基本的な事を教えて貰えるかな?」

 「分かりました。受付の右手にあるオーブに手を翳して下さい....はい!OKです」

 占い師が使っているアレだ、透明な真円の水晶が台座に固定されて、薄く発光している。


 「ユート様ですね。お噂はお聞きしております。他の受付嬢達とも噂してたんですにゃよ?若いのに沢山の人を指揮して、王都を救った救世主!なんて皆言ってますにゃ」

 握手してくださいにゃ!と横道に逸れたが、登録は完了したとの事だ。


 「ランクは、G級石ストーン、F級鉄アイアン、E級銅ブロンズ、D級銀シルバー、C級金ゴールド、B級白銀プラチナ、A級魔法銀ミスリル、S級アダマンタイト、SS級オリハルコンとなっています」

 昇格は依頼の達成回数と試験があるらしい。ただし、試験があるのは、本格的に実力者だと判断できるD級のシルバーかららしい。


 「ランクが上がる毎に登録証のドッグタグが更新されますので、忘れないで提出してくださいにゃ?G級からE級までは統一でブロンズですが、それ以上になると、ランク通りの材質に変わりますにゃ」


 なるほど、見て分かるレベルの実力を示すなら、最低D級の銀タグが必要になるっと、忘れないようにしないとな。

 「タグの紛失は、材料に応じての金額になりますが、支払って再発行だけでにゃく、評価に関わるので気を付けてくださいにゃ。理由によって考慮はされますが、最悪ランクダウンもありますから注意ですにゃ?」


 ....注意ですよ?っていった時にネコミミがヒクヒクして可愛かったなぁ(マスター!話に集中してください!)っと....モフモフしたいんだよぉ!


 「ああ、草原で狩ってきた獲物を引き取って欲しいんだけど」 

 「それでは、あちらの買取カウンターまでお越しくださいにゃ」とミルクが駆けていくと、スライドするように控えていた受付嬢が席に座る。

 そういうシステムなのか。なるほど、興味深い....彼女は獣人だがイヌミミだ。

 俺はどちらでもご飯3杯はいけるんだが?(マスター?そんなこと誰も聞いてませんよ?) え?そうなの?(そうです!)

 

 買取カウンターに行くとこちらはかなり広くなっていて、大型の獲物や大量にある場合は、置くの解体場に案内される。

 

 「こちらに獲物を出してくださいにゃ。解体には別料金が必要にゃのと、査定終了してからの受け取りになるので時間が掛かりますにゃ」

 「ああ、獲物は全部解体完了してるから大丈夫だよ」

 「それは助かりますにゃ。では、こちらに出してくださいにゃ」

 

 ....2800匹分なんて置けないんだが?

 「ちょっとここだと置ききれないかな?」

 「え?ユートさんLV1ですにゃ?一体何を狩ってきたんですかにゃ?」

 「ラビットとマスターラビットかな?」

 「え?マスターラビット?倒せるんですかにゃ?」

 「え?まぁ...その、なんとか?」


 うわ!怪訝そうな顔で見ないで!嘘じゃ無いってば!

 「それに置ききれないって、ラビットだったはずですにゃ?100匹でも200匹でも、楽に置けますにゃよ?」 「いや~その、2...800匹くらいかなぁって」

 「800匹!一応、ギリギリそれ位なら置けなくも無いですけどにゃ!そんなに狩れるわけないじゃないですにゃ!にゃったら、にゃんでLV1なんですかにゃ!」


 (マスター、どうするんですか?800匹とマスターラビットだけでオーバーヒートしそうになってますよ?)

 むう....この展開は非常に不味い....美味しいのか?どうすれば良い?

 「とりあえず、討伐証明部位を出してください!狩った本人か判別できます」

 おお!なんという便利機能、全部出しちゃえ!(マスター、ここは少しずつ出すほ)

 

 カウンターに並んだ、ラビットの耳x2800とマスターラビットの耳x5、おまけに【ピョン吉】【デビット】のユニーク個体の耳を見て、ミルクが真っ青になる

 確かに鑑定してみると討伐者【ユート】となっている。大丈夫だ、問題無い。


 「にゃーーーーーんで!?にゃんでにゃんで!?」グルグル目が回りだした...あかん奴かもしれん

 「にゃ~はは...にゃは...にゃるほど....分からんにゃ!」バタンと倒れそうになるのを慌てて抱きかかえる。(マスター....やらかしましたね?)


 「てめぇ!俺のミルクちゃんにナニしてくれてんだ!ぶっ殺ろがすぞ?あん?」

 声のあがった方を見ると、30代後半くらいだろうか?厳つい顔のむさいおっさんが、威圧的な態度でこちらに歩いてくる。....一応は銀タグ付けてるね一応ね。

 

 「にゃはは~にゃ~んてにゃ....」駄目だコレ、早くなんとかしないと!

 「てめぇ!聞いてんのかコラァ!俺のミルク、俺のミルクちゃんにナニしてくれてんだコラ!」

 俺のミルク俺のミルクうっせえんだよ!お前のミルクなんか見たくねぇよ!イカ臭ぇんだろ?


 「ナニしてないですよ?誰ですか?俺のミルクさんですか?わかりました。3秒で消えてください!3・2・1・0...はい!失せてくださいね?」

 (なに。火に油注いでるんですか!マスター、知りませんよ?)

 大体、ぶっ殺がすってなんだよ?ナニしたいのお前だろ?っていう。

 

 (マスター、分かっていると思いますが、殺しちゃだめですよ?)

 「大丈夫だよ。大好きなミルクちゃんと仲良く出来るようにするだけだ」

 (え”...それって....)


 何が悲しくておっさんの相手をせにゃならんのだ....テンプレ恐るべし!!

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