朝倉くんの周りは不思議なことがいっぱい!

中野唯

第1話 飯塚あさひは幽霊である。




 幽霊―。

 大昔から何かにつけて話題となるが、

科学的に証明することが出来ない。

 故に、幽霊は"存在しない"ものであるとされる。



 だがしかし、僕ははっきりと明確に断言しよう。

 「幽霊は存在する!」

 「いきなりどうしたの?」

 うざったそうに、じとーっとこっちを見る少女。

しかし、この少女は、ただの人間じゃない。



 僕が幽霊は存在すると断言できる理由。

この少女がまさに幽霊なのである。

 いきなりそんなことを言われても信じられないと言う方もいるだろうが、

飯塚あさひが幽霊であるということは1+1が2になるように至極当然の事実として、ぜひ受け入れていただきたい。



 受け入れたか?OK?

 さて、受け入れていただいた上で、

もう少し幽霊について詳しく話していこうと思う。

まず、全員の認識として幽霊は見えなかったり、

物質をすり抜けていく。それは正解だ。

 そして、世間一般の認識とは違う点として

白装束でも無ければ足がないわけでもないし、

髪がびっくりするくらい長いわけでもない。

…いや、そういう幽霊もいるかもしれないが、



 僕は生まれつき霊感が強いので、見えないはずのものでもくっきりはっきり見えるし、

あまつさえ触れることもできる。

まぁ、この異常な程の霊感の強さについての説明はまたの機会にさせていただこう。



 「ねぇ。」

 「ん?何?」

 「ふへへ」



 普段無愛想なあさひがニコニコしながら、僕の手を握る。

先述の通り僕は幽霊に触れることができる。

それはもちろん逆も然りなわけで、つまり幽霊からすると、

僕は唯一触れることが出来る存在というわけである。

 幽霊としても、僕の存在は予想外のものらしく

こうやってニギニギされることもめずらしくない。



 「んふぅ…」

 それにしてもこの顔である。

 曰く、暖かさを感じるのは死んでから初めてのことなので、

とても新鮮で嬉しいらしい。

そんなことを言われてしまえば、断れないだろう?

 しかし、朝倉さんはここでノーと言える男である。



「いい加減離して下さい」

「や」

「嫌って…、ゲームできないんだけど」

「ダメ、なの…?」

 眉をはの字に曲げて、目を潤ませて上目遣いという三連コンボで僕は口ほどにもなく打ちのめされてしまった。



 手を握られている間に先ほどの話の続きをしよう。

僕は霊媒師の家系で、霊感の強さはそこに由来する。

霊媒師とはいっても、つい最近まで霊を見たことは無かった。



否。見えてはいたのだが、

幽霊も普通の人とパッと見は何も変わらないので気づかなかったのである。

僕の家は悪霊が寄り付かないように特殊な結界が張られているというのも理由の一つだろう。



しかし、その結界もあさひのような悪霊じゃないものなら入ってこれるガバガバなものなので、

最近は幽霊のみならず、猫娘や人魚、妖精のような人外までもが遊びに来るようになり、

僕の日常は急速に破綻していくのであった。

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