廃墟のあまりに快適な通気
そのあんまりな
破れガラスの窓から
外気は平気に侵入し
廃墟に
不愉快だといえ不愉快と
不愉快だといえと呪詛を捧げていた
日の暮れの
長く濃い影がここにも射して
時間はあるのだと落胆する不甲斐ない
体をかかえて私はようやく帰宅した
身に覚えのない子供をひとり懐胎していた
この子はきっと家出少年に育ち
入江の船を寝床にし
やがて大海のどまんなかで
立派な脱糞をするだろう
そして血は争えず
また呪詛がくりかえされる
引き返していく船を見送り
仕送りのしようもない潮風を住所とし
神出鬼没の夢に咲く
かつての廃墟のなかで
快適な通気の不愉快な侵入に
跳ねるように目覚めてみれば
彼は油を使い果たした灯台の
懐胎を告げる古い港町に寄港するだろう
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