我が疾走詩篇
賢治 賢治 賢治 賢治
形容する暇などないと言った
雲の運行を
言葉を踏み外しても
剛造 剛造 剛造
書き付ける黄金詩篇の詩集
言葉の脱臼
知覚されたときはもう
消えかかるうしろ姿であるイメージ
捉えるに精確な言葉を選ぶ暇がない
肌を吸って神経を燃やして走った
(そうか、皮膚ガソリン!)
次々に来る風を継ぎ継ぎに印字し
狂風のなか
全細胞を発火して疾駆する
ああ 与えられた安心の
標的も目的地もない
ただ激しく燃えて疾駆する
びっこになっても疾駆する
遂に人体燃え尽きてもまだ駆る
駆り立ててくるイメージ
分裂相次ぎ 無数の去来
書き付ける! 書き付ける!
ワイングラスも燃えている
あらゆる物象は裂け
隠喩の太陽
剥き出しだ!
一斉に互いを照射する只中
自己も焼滅に傾斜
身を滅ぼしながらあらゆる物象を焼く
天空には太陽掲げられ
太陽も剥き出しになった太陽の隠喩を露出して焼かれる
燃え落ちる火花は鳥の
残像 三蔵法師持ち帰った経典
焚書となって世界に立ち込める
玄奘三蔵も死んだ なんで
渦を巻いて台風吹く
一網打尽に吹く暴風
真空を縁取る渦
螺旋を描いて上昇する
真空!
賢治 賢治 賢治 賢治
ああ あらゆる呪術を否定し
あらゆる論証を失い
あらゆるイメージは破れた馬となって
銀色の手がもう滅茶苦茶に吹いている
紫の静止を包囲して草薙ぐ
錯乱のなか
錯乱者は不思議なしずかだ
イメージの銀色の腕が無闇に物象を網状に
繋いでいく過剰で盲状態に墜落する
人々は腐敗のなかを生きている
退色とともに狂人は落ちていく
形容する暇などない
暴風のなか降り注ぐ無数の雨と陽光
ぞっとするほどの静謐だ
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