晩餐


お袋が不倫を親父に見咎められた翌朝、俺と親父を置いて失踪した。あれからもう4ヶ月が経つ。警察も不倫相手との駆け落ちと断定し、全く取り合ってくれなかった。

あの日から、家事は親父と俺の不器用な二人で、手分けしてやっている。そんな、ある晩、父が作った生姜焼きを二人で食べていると、親父はボソっと呟いた。『ごめんな、料理本読みながら作ったけどあんまり美味く無いな…母さんみたいに美味く作れないな…』と、ボンヤリ皿を見つめた…


俺は、親父を励まそうと、 『親父、何言ってんだよ美味いよ!この肉の味なんて、お袋の味そのものだよ!』と冗談めかして言った。


すると親父は、ニタァ〜 と笑い、『おまえ、知ってたのか?この肉がアイツの肉だってこと…』と静かにつぶやいた。

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