第24話 誰が呼んだ……。誰を?もちろん私達をだよ!
体育館に戻った俺は時計を見た。休憩に入ってから約8分が経過していた。
「ねぇ、あんたの言っていた。助っ人て何処にいるの?」
清水は少し焦ったように聞いてきた。
「俺が聞きたいぐらいだよ。」
あいつ等遅すぎるだろ。もう始まっちゃうんですが!
「一分前なので選手は準備を始めてください。」
一空さんの声が体育館中に響き渡る。
「ホントにどうするのよ!木島君のチームは木島君以外全員交代でしかもバスケ部の三年のレギュラーメンバーだよ!」
「ご丁寧にどうも!そこまで言われなくてもわかってるよ。」
どうする……このままだと交替しないで後半を迎えることになる。そうなると、まず勝目がない。
「選手は全員コートに入ってください。」
一空の声と共に木島チームは此方に歩いてきた。
「あれ?お前たちは交替しないの?」
「バカ、止めとけよ!勝目がないのに挑んできたバカだろ。」
三年生の二人は此方を見下しながらそういい放った。
「伏見くん……もう諦めたらどうだい?今ならここで謝ったら許してあげるよ。」
木島は俺の肩に手を置きそう言った。
「ふざけんなよ、俺は言った事は絶対やるんだよ。」
俺は木島の手を払い除けた。その時後ろのドアが開いた。
「ハァ、ハァ、ハァ……お兄ちゃん?」
ドア開け入ってきた二人の少女は此方を見た。
「あ!お兄ちゃんだ!ヤッホー!」
ドアを開けて入ってきたのは妹たちだった。
「何でそんなに水無月は疲れてるんだ?」
皐月の方は全く汗をかいておらずどこか涼しげだった。しかし水無月は額に汗をかいておりまるでマラソンをしてきたのかと、言うぐらいの疲れようだ。
「皐月が全然起きなくて大変だったんだから。」
何か想像がついてしまう。皐月は極端に朝に弱いからしょうがない。
「ねぇ、まさかあんたが呼んだ助っ人て、妹ちゃんたち?」
清水は妹たちに抱きつきながらそう告げた。
「おい!妹たちから離れろ。妹に抱きついていいのはお兄ちゃんだけだ!」
「いや、お兄ちゃんは絶対駄目だから!」
辛辣!お兄ちゃんのハートが割れる音がしちゃうよ!
「私は抱きつかれてもいいよ~!」
皐月は行きなり抱きついてきた。
「ちょっと皐月さん、お兄ちゃん困るんだけど。」
「嫌だった?」
皐月は上目遣いで此方を見て手を目元へ持っていった。
「いや、全然!何ならお兄ちゃんから抱きつくまであるから。」
「「「それはキモい」」」
皐月と水無月、そして清水が一斉に声を発した。
ちょっと、何でそう言うところだけ息ぴったりなんですかね。本当に俺のハートをブレイクショットしたいの?
「伏見くん、もう試合が始まるけど誰を交替させるの?」
大鳥が俺の後ろからひょいっと顔を出した。
ああ、やっぱり妹たちと大鳥はかわいいな!一空さんが惚れるのも納得できる。
「それなんだけどな、清水と大鳥を交替させようと思う。」
「ま、妥当よね。私達じゃ、足手まといだし。」
「わかった。」
清水はあっけらかんとそう答えた。大鳥もまた一言そう答えると頷いた。
「……ん?何か見覚えがあるような?」
水無月は木島たちの方を見てそう呟いた。
「水無月?どうかしたのか?」
「あ、ああ。ねぇお兄ちゃん?あっちのチームの女の人に見覚えがあるような気がするんだけど?」
あっちのチームの女子て、山寺のことか?水無月に話した覚えがないけどな?
「気のせいだろ?さ、試合だ試合!」
俺が歩き出すと水無月も隣を歩き出した。しかし目線は山寺の方に向かっていた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!本気でやっていいの?」
「え!?いいんじゃないかな?」
皐月が袖を引っ張り聞いてくる。何でそんなことを聞くのかは全くもってわからないが。
「ダメに決まってるでしょ!」
しかし、俺の放った言葉のすぐ後に水無月はそう告げた。
「え~!何で!?いいじゃんか!」
「あんたが本気でやったら試合も何もないじゃない!」
ん??お兄ちゃん全然ついていけてないけど、少なくともわかるのは水無月がいった言葉はどう考えても相手への挑発にしか聞こえなかった。
「へ~言ってくれるじゃんか!女相手に負ける何てまずねぇよ。」
木島の隣にいる身長の高い男がそういい放った。
「……はぁ?あんた今何て言った……?」
水無月から冷たく冷えきった声が出てきた。
「女じゃ勝てない?じゃあ、女なめてるあんたじゃ、私達に勝てないよ。」
「はは!お姉ちゃんが怒った!」
ちょっと皐月さんこういう時は空気を読もうね。絶対煽る空気じゃなかったよね?
「でも……あの言い方は心底腹が立つよね。」
ひっ!皐月も実は起こってたんですね。
「さっさと始めよう。私ウズウズしていてもたってもいられないから。」
「お、おう!じゃあ、行きますかね。」
妹たちは頷き皐月は右サイドに水無月は左サイドについた。
「後半戦開始してください。」
一空さんの声と共に後半戦の合図がかかった。
さてと、俺が最後に妹たちのバスケを見たのは中学上がってすぐの練習試合だったかな。その時は確か水無月の方が上手かったような気がしたな。
「じゃ、最初は手堅く頼むぞ!水無月!」
俺は左サイドにいる水無月へとパスをした。水無月なら無理をしないで確実に決めていってくれるだろう。
しかし、その期待とは裏腹に水無月の行動は期待とは真逆の行動に出ていた。
「へ?」
水無月はパスを受け取った瞬間、シュート態勢にはいりボールを放った。そのボールは吸い込まれるようにゴールに入っていた。
「お兄ちゃん、そんなに驚いた顔をしないでよ。私はお兄ちゃん見たいに運で決めた訳じゃないから。」
凄いなこいつは、さっきのシュートは自分の実力で決めたって言いたいわけね。
「それに……女の私にこんな簡単に決められてるなんてね。」
水無月はそう告げるとさっきの男の方を見た。
「教えてあげますよ!女の恐ろしさってやつを。」
会場が一瞬にして凍りついた。
だって!水無月さんが物凄い怖いんだもん!もう、喧嘩はしないでおこう。多分勝てないから……精神的に。
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