第19話 俺もう疲れた……。

「さて、先制点は伏見チームに入ったわけですが。これはまぐれですよね?」


「そうだな。間違いなくまぐれだろう。」


おい!あんた達、そこまでまぐれとか言わなくても!


「あんたね!いきなり投げることないじゃない!入んなかったらどうするのよ!」


清水は声音を強めながら近づいてきた。


「いや、昨日説明しただろ?運の勝負するって、それに決まったんだから良いじゃねーか。」


「確かに決まりはしたけど……。」


次第に清水の言葉は小さくなっていき口でゴニョゴニョ何か言っていた。


「ま、でも、次は守備だ。せっかく先制したんだ。一本止めて、リードしようぜ。」


「はぁ~、分かったわよ。」


清水は呆れたように肩をすくめた。


「ま、切り替えも大事よね。」


「次は守備だが、大鳥、出来るか?」


俺は大鳥の目を見て聞いた。


「出来るかじゃなくて、やらなきゃいけないんだよ。」


そう言うと大鳥は目を真っ直ぐこちらに向け笑顔を見せた。


「そんじゃ、ま、気軽にいきますか。」


「はは、そうだね。僕も頑張るよ。」


「あら、伏見くんはいつも気軽でしょ?一人なんだから。」


清水は口元に手をやりながらニヤニヤして此方を見てくる。


このやろ!お前もこれから一人ぼっちだろうが!


「後で覚えとけよ!このエセ美少女が!」


「誰が!エセ美少女よ!私は美少女になりたくてなったんじゃないんだから、元が美少女なんです~。」


「はぁ~?いってる意味がわかりません?」


「まぁまぁ、その辺にしておこ、ね?」


大鳥が俺達の間で手を降った。


くそ、マジで覚えとけよ。


「おい!清水、昨日いったことちゃんとやれよ!」


「言われなくてもわかってるわよ!」


そう言うと俺達は守備についた。それと同時に木島達もボールを持ち位置についた。


「やっぱり僕のマークは君か、伏見」


「は、俺じゃなくて清水か大鳥の方が良かったか?」


「そりゃ、女の子の方が良かったけどこんなむさ苦しい男よりはね。」


誰がむさ苦しい男だよ!自分が爽やかイケメンとでも言いたいのかコノヤロー!


「ま、でもこれでよかったと思うよ。これなら君と決着がつけられる。」


「は、それなら残念だったな。」


木島が顔を傾け不思議そうに見てきた。


「どういう意味だい?」


「すぐわかるさ。」


言い終わると同時に斉藤からボールが木島に渡された。


「さて、じゃあ始めようか。僕の勝負を!」


「おい、お前忘れてないか?俺は試合にさへ勝てればそれでいいんだよ。」


木島がボールを受け取った瞬間、俺の後ろから清水があらわれた。


「な、何で君が!」


「悪いな、俺一人じゃ役不足だと思って清水もお前のマークに入らせてもらうぞ。」


「そうね。伏見くん一人じゃ相手にならないと思ってね。」


木島は一瞬顔をしかめた。


……………………………………………………


「あんたね!運の次は守備を捨てるってどういう事よ!」


「お前な、誰も捨てるなんて言ってないだろ?少しは話を聞け。」


清水は席を立ち上がり机を叩いた。


「だけど?それってどういう事かな?それじゃ、山寺さんのマークは誰がつくの?」


大鳥は落ち着いた声音で返答してきた。


「ああ、確かに俺達が二人で木島のマークにつき、大鳥が斉藤のマークにつけば確実に山寺がフリーになるだろうな。」


「あんたね!なるだろうな、じゃないわよ!私ならすぐにそこにパスを出すわよ!」


確かに清水の言ってることは合ってる。


「けどな、現実にあいつ等とまともにバスケしたって勝てるとは思うか?」


「そ、それは確かにそうだけど……。」


「だからな、これも賭けだ。さっきの運と同じだ。木島や他の奴が乗ってくれるか分からないがこれしかないと思う。」


「だけど、伏見くんと清水さんで止められなかったらどうするの?」


大鳥が小首を傾げた。


「だから、大鳥それをお前に任したい。」


……………………………………………………


「少し驚いたが。伏見、お前と清水さんで僕を止められるとでも思ってるのかい?」


「ああ。止められるね。」


正直そんなことはこれホッチも思っちゃいない。これはハッタリだよ。俺達が木島に勝てるわけがない。


「それに君たちが僕のマークに着くってことは山寺がフリーになることは予想できなかったのか?」


そう言った瞬間、木島はボールを両手で放った。


ああ。知っているとも、俺達が木島のマークを着くってことがどう言うことなのか。そしてそれを予想した俺達がどうするのかもな!


「ダメ!こっちにパスしちゃ!」


山寺の大声が体育館中に響き渡る。


「大鳥!止めろぉぉぉぉ!」


その瞬間俺達の影に隠れていた大鳥が手を出し木島と清水の間に割り込んでボールを取った。


「なっ、いつの間にそこにいたんだ。確か大鳥くんは斉藤にマークしてたんじゃ。」


「なぁ、木島お前さ何で俺と清水がマークに着いたかわかるか?」


木島が顔をしかめ、その手には力が入っていた。


「簡単だよ。俺達の方が身長が高かった。それだけとことだよ。」


「どういう意味だ?それと、これと何が関係あるんだ?」


「ここまで言ってわからないか?大鳥は背が俺たちより小さい、だから俺達がお前のマークにつけば大鳥は俺達の背でお前から見えなくなるよな?」


木島は納得したように俺達を睨んだ。


「さて、今の気持ちはどうだ?バスケのエースさんよ!最弱だと思ったやつに敗れる気分はよ」


俺は片手を上に振り上げ拳は握った。そして、その手を人差し指と親指だけ開き木島の方に向けた。


「これは俺達最弱がお前達最強に勝つために考えた、作戦だよ。お前達が余裕をこいてる間にな!」


声音を強くして木島達に向けと俺はそういい放った。




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