ボッチの青春ストーカーラブコメはどう見ても間違いである。

フクロウ

第1話 ボッチな伏見井就のスイートライフ。

 高校青春ラブコメとは誰もが求め追及するもの。


 その高校青春ラブコメの場においては何をしても全てがと言う二文字において許されてしまう。


 しかし、その青春と言う文字に最も遠い存在が必ず存在する。


 それを例えるなら善あるところに悪がある。


 ボッチ、それは一人でいる人の事を呼ぶ俗称である。


 しかし?俺は、伏見井就ふしみいなりは、ボッチではない。


 だって、俺にはストーカーがついているから。


「あの~いい加減そこから出てきてもらっていいですかね?」


 俺は学校の屋上で扉の後ろにいるであろう人に話しかけた。


「…………ここには誰もいません。」


「いや、答えてるし、反応してるし。」


 扉の後ろから女子で、あろう声がした。


「貴方みたいなボッチでキモい人に話しかける人なんてきっとろくなひとじゃないですよ。」


 こいつ……。


「じゃあ、きっと今現在進行形で話しているお前はろくなストーカーじゃないな!」


「な、私はストーカー何かじゃない!」


 屋上の扉が勢いよく開いた。


 そこに居たのは隣のクラスの美少女と言われている。 清水榛名きよみずはるなだった。


「そんな、お前って隣のクラスのバカみたいな事しかしゃべってない清水榛名じゃないか!?」


 正直言って俺は驚いている。てっきりキモオタ女子が俺をオタクと勘違いしてストーキングしてるのかと思ってた。


「誰がバカみたいな会話をしてるって!?」


「実際、してるだろ。誰が格好いいとか、あの先輩イケメンとか。」


「そ、それは別にしたくてしてるわけじゃないくて………。とにかく私はストーカーじゃないから!」


 清水は怒りながら喋りかけてくる。


「大体!私見たいな絶世の美少女があんたみたいなキモオタボッチにストーカーするわけないでしょ!ちょっと自意識過剰じゃない?」


 うわぁー。自分で言っちゃってるよ。


「そうですか。じゃあ聞くけど先月辺りから俺に付きまとってる理由はなに?」


 清水は顔を背けまた毒舌をはいた。


「な、なんの事だか分からないんだけど!?な、何?自分が誰かに見られているみたいなこと思ってるわけ?」


「だが!そうだったろ。お前はこの屋上で俺に話しかけられた。いつもは屋上なんて使われていないのに。」


 清水の顔色が少しは悪くなったような気がする。


「そんなの分かんないじゃない。私じゃなかったかも知れないわよ!そもそも私が貴方みたいなボッチに興味が湧くとでも?」


 ぐっ!否定できないのが心苦しい。


「おい!そのボッチてのはやめろよ!俺はボッチ何かじゃねーぞ!」


 そうだ!俺はボッチ何かじゃない!


 だって普通に授業の時に教師から隣の人と質問し会えと言う無理難題を押し付けられたときだって……。


 あ、確かにその時に隣に座っていた女子が口元をひきつらしながらこう言ってたっけ。


「別にしなくてもいいよね?」


 そうですね!俺となんか喋りたくないですよね!


「えっと、やっぱり訂正するは俺、ボッチだわ。」


 少し黒歴史を思いだし暗い顔をしていたら清水が同情してきた。


「あ、あっと、そうだな、がんばれ!」


 何をだよ!


「話を戻そう。何で俺のあとを追ってきた。嘘なしで頼むぞ。」


 少し元気を取り戻した俺は話を戻した。


「はぁ~。そうだね。ここまで来たら言った方が楽かな。実は……わ、私。」


 こ、これは、これはまさか、まさかの、俗に言うあれですか?


 こ、ここここここ、告白?


「実は……私、俗に言うオタクと言うやつでして。」


「はぁ?」


 つい間抜けな声を出してしまった。


「だから、私はオタクなの!家ではごろごろしてゲームとマンガとアニメだけ!」


 ん!?こいつは何をいってるんだ?


 それに、俺の、俺の期待をかえせー!


「それがどうしたんだよ!なぜ俺に言う必要があるんだ!?」


 実際問題俺に言う必要はないと思う。全くこいつの意図が読めん。


「そ、その、何て言うの?高校デビューしてみたらいつの間にか清楚で規律正しい美少女見たいな扱いになってたのよ。」


「何だそりゃ?俺への当て付けか?高校デビュー仕様として初日から一時間前に家を出て交通事故にあったせいで高校デビューを逃した俺への当て付けだろ。」


 いつの間にか清水がまるで気持ち悪いものでも見るかのような目付きになっていた。


「さすがにキモいは、あんた……。それにさ、高校デビューなんてしなきゃよかったと今では思うよ。」


「よく言うな。こっちのクラスまで来てゲラゲラと笑ってたくせに。もうボッチを否定されてる気分だぞ。」


「そうだけど、そうじゃないって言うか。何か今の自分が本当の自分じゃないみたいな感じがして。」


 本当の自分……。


「なぁそれならさ今のお前は何なんだよ?偽物?模造品?空無の自分?」


「そ、そんな事はないけど!私は何かちょっと違うな見たいな感じがして。」


 は!笑わせてくれるなよ。


「何が違うのか俺には分からない!じゃあお前の本物は家族と一緒にいるときのお前が本物か?それとも一人でいるときの自分か?」


「だから!分からないんだって!でも、私はオタクだからあんなキラキラしている場所が少し居づらいな、とか思ってさ。」


「なら、やめれば良いじゃないか。」


「そんな簡単に止められれば止めてるよ!」


「いいや違うな。やめようと思えば止められる。これは俺の持論だが、周りの人間は変えられない。されど自分の周りの関係は変えられる。」


 清水は意味が分からないのか首を傾げている。


「何が言いたいのか分からないんだけど!?」


「簡単に言ってやる。自分が嫌なら自分で周りの関係を変えてみろ。」


 その後俺は屋上から逃げるように去っていった。

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