嘘つき少女は今日も喋らない

楠木黒猫きな粉

偽者と偽物

吐いた言葉は嘘ばかり

何かを作れば偽物ばかり

考えることは虚構ばかり

だから私はーーーーーー

『嘘つき』なんだ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

子供の頃の話をしよう

人は生まれつきある能力を持つらしい

それは誰一人の例外もなく発現する

だから人は優劣をつけたがった

特に子供というのは自分が一番になりたがる

それは私も例外ではなかった

私だって一番になりたかった

だけど私の能力は戦闘向きでも回復系でもなかった

私の能力、それは『嘘』

この能力は戦闘には使えない

それどころか何も出来ないに等しい

そう思っていた

実際、馬鹿にされたこともあった

だからと戦ってみた

結果は私が勝った

圧勝だ

何故かって?

それはあの頃の戦闘風景を見てもらえればわかるだろう

ーーーーーーーーーーーー

「嘘つき野郎が俺に勝てるかよぉ!」

敵が能力を使う

だから私も能力を使う

「勝てるよ、確実に」

私はそう言って言葉を紡ぐ

能力を発動させる言葉を

「これで死ねぇぇぇ!」

相手は氷を操る能力だったか

性格とは真逆ですね

「私が喋る言葉は嘘、私が創るものは偽物、ならば私は伝説すらも書き換える。さぁ顕れろ伝説の聖剣よ」

能力が発動する

目の前に一振りの剣が顕れる

存在しないはずの聖剣

これが私の能力

けれどこれは偽物だから

本物ではない

だけど私はこの剣の名前を呼ぶ

「エクスカリバー、あれを壊せ」

相手が怯えている

どうして?

私には君の方が怖く見えるのに

「この、化け物がぁあ!」

少年が私をそう呼ぶ

「なんで私が化け物なの?」

首をかしげる

手には伝説の聖剣を持って

「でも、もういいや♪」

私は聖剣を振りかざした

極光が少年を飲む

光が止んだ

相手が倒れている

アレは偽物に負けたのだ

コロシアムの観客席から大きな歓声が聞こえる

何故か?

相手が日本ランク一位の能力者だったから

そして私はーーー十歳にして日本最強になってしまった

ーーーー私は同級生が日本最強だなんて知らなかった興味もなかった

ーーーそして嘘つき少女は喋らなくなった

ーーー言葉は全て嘘になるから


ーーーーーーーーー

ここまでが私が日本最強の能力者になった話

そして今日も私は最強になる

だって私は『嘘つき』だから

万象を騙る嘘つきだから

偽物を創る嘘つきだから

ーーーーーー

『嘘は嫌い』

『本物が好き』

『虚構は嫌い』

『真実が好き』

ーーーーーーだから私は喋らない

ーーーーーーだから私は作らない

ーーーーーーだから私は考えない


そんな毎日は唐突に終わりを告げる


ある日の事

私が家のドアを開けた

足下に何かの模様が描かれていた

「なッ!」

その日

世界から一人の最強が消えた

その最強とは

私ーーーーーー有川美玲のことなのだが







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嘘つき少女は今日も喋らない 楠木黒猫きな粉 @sepuroeleven

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