月の鯨

まりんみい

王都襲撃編

届かぬ月

 世継ぎの産まれる満潮の宵

 ともに産まれた明媚な子に

 月の名前を授けましょう

 月を助けた麗人の子に

 月の御加護がありますように






 ───月暦 1020年 月栄国



 下町は白い花で溢れ、華やかに着飾った商人たちが店を連ねていた。

 明日は現王、ラン 秋明シュウメイ様の御子息、藍 黎明レイメイ様の20歳の誕生日であり、また、その黎明様が新王になる即位式が執り行われるのだ。


 約1000年の歴史があるこの月栄国ゲツエイコクでは王の御子息が20歳になった日、必ず新王に即位する。

 そしてその黎明様は月栄国が建国されてから丁度1000年の慊焉たる日に産まれた事もあり、月からの贈物だとか、月からの使者だ…と、民衆から深く敬愛されているのだ。


 月栄国ではその名の通り、月を敬うしきたりがあり、王の正妃となった女性は月姫つきひめと名乗る権限を与えられる。

 月姫の名は貴く、そして麗しく、月栄の世に一番に潤り輝く名なのである。

 したがって正妃以外の女性は貴族であっても決して月の名を名乗ってはいけないのだ。


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月の鯨 まりんみい @marine-mii

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