理香
高校3年生、それは高校生活最後の夏休みでもある。本来なら大学進学のために受験勉強やオープンキャンパスに参加しなければならないが、我が高校は某大学の系列高校であるため、書類審査と面接だけでその系列の大学に進学することができる。よって、我が高校の夏休みは希望する学部があるキャンパスの見学と面接の練習くらいしか進路関係の課題はない。
1学期の終業式当日、ホームルームが終わり、これから夏休みだという時、僕は理香に「あんたに大事な話がある」と声をかけられた。僕は、「何だよ、急に改まって・・・」と理香に言う。後ろには真綾がいる。どうやら理香に何か色々言っているようだ。よく聞こえないが。そして・・・
「私、大和のことが好き。大好き。愛してるの。よかったら付き合ってください」
僕は理香に告白された。これはつまり、理香が1人の男性として僕のことが好きだっていうことだ。理香の言葉は真剣だった。幼稚園以来の付き合いである幼なじみがここまで真顔で僕に言うのは初めてかもしれない。そして、理香の顔は初めて見るくらい紅潮していた。そして、僕の顔も紅潮し始め、心拍数が凄いことになり始めた。
『背が高くて、ショートカットで、運動神経抜群で、そして活発な幼なじみ』
それが僕のイメージする理香だった。そして僕はこう考えているうちに、理香にこう返事をした。
「ありがとう。僕を好きになってくれて・・・付き合おうか」
こうして僕は理香と付き合うことになった。そして、僕にとって、そして理香にとっても人生最初の恋人ができた瞬間でもあった。
「私も部活引退したし、これからは毎日大和とデートできるね♡」
帰りの電車で、理香は僕にそんなことを言ってきた。僕は「つーか理香、都選抜に選ばれてるじゃん。それに大学でもソフト続けるし」と理香に言ってやった。しかし、前の席に座っている真綾の視線が鋭い。視線が気になってしょうがない。
そして最寄駅に到着。ここで理香や真綾とは別れた。家に帰ると莉奈ちゃんがもう家に帰ってきていた。帰ったばかりなのか、莉奈ちゃんは高校の制服を着ていた。どうやら莉奈ちゃんに通う高校も終業式だったようだ。
「そういえばお兄ちゃん、理香さんと付き合うことになったの?」
「そうだけど、何で知ってるの?」
「さっき、真綾お姉ちゃんからLINEが届いたの。『大和と理香が付き合うことになった』って」
「真綾め・・・」
「お兄ちゃんおめでとう!やっと彼女できたね」
「うん、ありがとう・・・」
昼食時、お互い部屋着に着替えた僕と莉奈ちゃんはそんなことを話していた。父さんも真莉子さんも仕事でいない。美穂姉はまだ大学だ。よって今、この家にいるのは僕と莉奈ちゃんだけ。そして・・・
「理香です。大和はいますかー?」
理香がやって来た。玄関の扉と居間の窓を開けっ放しにしてたからインターホンを鳴らさなくても丸聞こえだ。程なくして「お邪魔しまーす」という声とともに、理香が居間にやって来た。そして理香は莉奈ちゃんに「こんにちは」と挨拶をする。
「あれ?大和いるじゃん。これからデート行こ。付き合う初日くらいは満足できるくらい遊びたいの」
「そうだな・・・今から準備するからちょっと待ってて!」
僕は出かける準備をし、恋人とのデートに行くことになった。そして義妹は「お兄ちゃんも理香さんも、デート楽しんできてね!」と言ってくれた。
理香との初デートは結局、近所で買い物をしたり、ゲーセンをしたりして時間と金を使った。そしてデートが終わる頃にはもう夕方になっていた。流石にお互いお腹が空いてきたので、僕と理香は駅前のレストランで夕食を取ることにした。
「大和、無理してない?だって、特に好きでもない私と付き合って・・・」
「別に無理なんてしてないよ!だって理香、幼稚園以来の付き合いだし、何でも知ってるし、めっちゃ可愛いから・・・」
「私、大和から初めて可愛いって言われたかも・・・私、大和と付き合うことができて幸せだよ?」
「ありがとう。僕も理香と恋人になってよかったと思う」
「私、今が人生で一番幸せだよ・・・」
僕は鶏肉のセットを、理香はハンバーグのセットを注文した。夏なので、冷たいドリンクバーが恋しい。そのためか、2人ともドリンクバーの飲み物を注ぐ時、大量の氷を入れていた。やっぱり暑い夏は冷たいコーラが一番飲みたくなる。
そして食事を済ませ、お互いそれぞれの家に帰ろうとした時、
「ねえ大和、まだキスしてなかったね・・・」
「あっ・・・」
「私、キスするの初めてなの」
「それは僕もだよ」
「そっか。なら安心だね・・・」
そして、お互い顔を合わせ、お互いの唇が触れあった。これは僕にとっても、理香にとっても、ファーストキスだ。それは脳が溶けるような、とても柔らかい感触だった。そして・・・
「ダーリン、ありがとう!今日は楽しかったよ!」
2人がそれぞれ家路につく時、僕に最高の笑顔を振りまいてくれた彼女の姿は、世界一可愛かったと思う。
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