コミケ!

そして翌日、僕・美穂姉・真綾の3人は、早朝から東京ビッグサイトの入口にいた。


「・・・それにしてもすごい行列ね」


と美穂姉は言う。そして真綾は、


「まだ朝6時過ぎたばかりだというのに・・・」


と言う。




僕たち3人は朝5時の電車で会場に向かった。ちなみに莉奈ちゃんは僕と美穂姉が家を出るときにはまだ寝ていた。そして電車に乗ること約1時間、目的地の駅に着く。しかし駅に着いた時にはもう大量の行列ができていた。電車は満員で、駅員さんの「走らないでください!」というアナウワンスが繰り返し聞こえる。


駅を降りた3人は父さんから送られたLINEの案内を便りに入口へと向かった。そしてたどり着いた先は長い列。この時間でこれだけの列だから徹夜で並んだ客も相当いるだろう。しかし、開場までまだ時間があったため、結局3人は事前にコンビニで買った朝食を食べることにした。そして朝食を食べようとした頃、莉奈ちゃんから今起きたというLINEが届いた。これから父さんたちとともにマイクロバスで会場に向かうらしい。


そして朝食を食べ終えた3人は昨晩はほとんど眠れず、みんなかなり眠かったため、開場の時間まで寝ていた。結局、午前10時の開場に合わせてアラームが鳴り3人とも目を覚ます。そして、開場の時刻。開場と同時に大勢の人間が一斉に目的地へ向かう。まず最初は父さんのアシスタントさんが出す同人誌を探すことにした。しかし結構バラけてるな。5人が5人、それぞれ違うところで売っている。とりあえず僕は男性向け同人誌が売っているブースを、美穂姉と真綾は女性向け同人誌が売っているブースを回ることにした。


そして1時間後、真綾から女性向け同人誌で売っている同人誌をすべて買ったというLINEの通知が届いた。女性向け同人誌で出していたアシスタントさんが3人(全員女性)だったので、2人で手分けして探したという。


そして僕はまず、元々買いたかった同人誌を数冊買い、そしてチーフアシスタントの水野みずのさんが描いた同人誌を買い終えたばかりだった。そして、これからもう1人、服部はっとりさんが出した同人誌を探しに向かう。


服部さんが出した同人誌は水野さんとは少し離れたブースで売っていた。そして服部さんと顔を合わせ購入。服部さんの同人誌を買い終えると、先に待ち合わせ場所で待機していた美穂姉と真綾と合流した。


気がつけば昼の12時、父さんと莉奈ちゃんが出るイベントは1時からのため食べる間もない。3人はすぐさまイベントが行われるブースに移動した。


そしてイベントが行われるブースに到着。3人は運よく、最前列中央の席を取ることができた。とはいえ、到着した頃にはすでに数人が席に座っており、僕たちが座ってからも続々と席が埋まった。そして後方の立ち見スペースも時間が経つに連れて埋まっていく。その間3人は、美穂姉と真綾が僕を待っている時に買ってきたという昼食を食べていた。





そして午後1時。大盛況の中、父さんが今描いている漫画、「アイドルキング」のイベントが始まった。




この漫画はある男子高校生が事故で死亡し、その高校生の脳が病気で脳死状態だった人気アイドルに移植されるというストーリーである。




まず、司会進行を務める男性タレントと女性声優の自己紹介から始まった。正直この2人はあまり知らない。辛うじて名前を聞いたことがある程度だった。そして2人は作品の紹介、そして作品の魅力を10分ほど語り、司会の男性がこう言った。


「では、そろそろご登壇の時間です。原作者の桜井健冶先生とサプライズゲスト5名の登場です!」


司会の男性がそう言うと、父さんと莉奈ちゃん、そして残りのサプライズゲスト4人が続々と壇上に出た。そして僕はその残りのサプライズゲスト4人が判明し、驚愕した。


そのサプライズゲストは莉奈ちゃんの他に、凛さん・彩さん・真弥さん・香織さんという顔ぶれだった。しかし4人とも何も言ってなかったぞ。昨日、4人のTwitterやブログを見たが、みんな明日コミケに顔出しますとしか書いていなかった。そして、僕は原作者である父さんの一言で、さらに驚愕した!




「原作者の桜井です。この度、アイドルキングが来年4月からアニメ放送されることが決定しました。そしてサプライズゲストの5人が、OPオープニングEDエンディングを歌います!」




あのあのあの、初耳なんですけど。父さんも何か言ってくれればよかったのに。そして父さんはこの5人が主要キャスト(というか全員5人組アイドルグループのキャスト)として出演することも告げていた。




まず、主人公でアイドルグループのセンターの女の子の配役は凛さん。ハスキーボイスで少年役もいけるので1人2役。そして主人公の親友的キャラのアイドル役には真弥さん。主人公のライバル的キャラのアイドル役には彩さん。グループ最年長のアイドル役には香織さん、と配役が続々と発表された。そして最後に最年少の中学生アイドル役に莉奈ちゃんが発表され、司会の女性声優さんも出演するらしい。




そして配役が発表されると父さんのトークショーが始まった。それに伴い、サプライズゲストの5人は一旦壇上から降りる。父さんはのトークショーの内容はこんな感じだった。


・自分が漫画家になった理由

・この漫画を描いたきっかけ

・キャラクターの簡単な紹介

・1週間を普段、どう使っているか

・読者からウケた話、ウケなかった話


そして父さんのトークショーが終わり、サプライズゲストの5人が再び壇上に上がった。どうやらこれで終わりらしい。都合1時間少々。父さんと5人の挨拶があり、これから父さんはサイン会を開くらしい。しかし、関係者が行くのもアレなので僕・美穂姉・真綾の3人はここでステージを後にした。




その後3人は特に行くあてもなかったので、会場をぶらぶらしていた。同人誌は軒並み完売。そして後の見物は美人のコスプレイヤーさんがカメラに撮られているのを見るくらいだった。


そしてこの後混雑すると思い、夕方になる前に帰ろうとしていた時、父さんから電話がかかった。




「さっきサイン会が終わってこれから帰るところだ。もし今から帰るのなら駅ではなくて関係者用の駐車場、シルバーのマイクロバスのところに向かってほしい。莉奈ちゃんたちもいるぞ」




僕は父さんからの電話の内容を美穂姉と真綾に伝え、3人で駐車場へ向かった。




僕・美穂姉・真綾の3人は、駐車場に停めてあったシルバーのマイクロバスに乗り込んだ。マイクロバスには、すでに父さんと莉奈ちゃん、そして凛さん・彩さん・真弥さん・香織さんが乗っていた。さらに父さんの担当編集さんや今日同人誌を出していたアシスタントさん、男性司会者やそれぞれの声優のマネージャーさん、そしてイベントで司会を務めていた男性タレントさんと女性声優さんもいた。


「あなたが桜井先生の息子さんなのね」


イベント時、司会を務めていた女性声優さんは僕にこう言った。名前は松沢麗華まつざわれいかさん。麗華さんや男性司会者の話によると、どうやら僕・美穂姉・真綾が最前列に座っていたことに気づいていたらしい。


そして父さんや莉奈ちゃんたちも3人がいたことに全員気づいていた。莉奈ちゃんは、「私とお兄ちゃん、何度も目が合ってたでしょ?」と言っていた。確かにそうだった。無意識だったけど、僕の視線はいつも莉奈ちゃんに合わせていたのかもしれない。




そしてこう言っているうちにバスは出発した。しかし全員の自宅まで送ってもらうことは無理なので、東京駅までバスで送り、そこで解散。今日司会を務めていた男性タレント・向井むかいさんは東京駅からタクシーに乗り帰宅。父さんの担当編集さんも別のタクシーに乗って帰路についた。


そして僕と莉奈ちゃん・美穂姉・真綾は最寄り駅が同じである凛さん・彩さん・真弥さん・香織さんとともに、電車で家に戻ることになった。途中までは父さんのアシスタントさんや麗華さん達とも一緒だった。そして最寄駅で真綾・凛さん・彩さん・真弥さん・香織さんと解散したのは言うまでもない。

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