第三節:未来からの使者
未来編:壱
こんな気分なんだろうか、俺は今最悪の光景が目の前に見えている。
大切な人が自分をかばい目の前で死んでいる、始まりの終わりは始まりとはいうけれど今目の前で起きているのは始まりなのか、終わりなのか、はっきり言ってわかっていなかった。
【インタールード未来編】
一週間前からその悲劇は始まっていたのだろう。
ある夢の中の出来事だった、暗闇を走っているとただ姿の見えないなにかに追われていたのは。
その悪夢から目覚めたのは一本の電話だった。
※
電話の相手は離れて暮らしている母からだった、元々は一緒に暮らしていたのだが中学卒業を期にほぼ強制的に一人暮らしをさせられることになった。
基本的に母親から掛かってくる電話は仕送りのがどうのこうのとか、メールで済むような事ばっかりなので一回目の着信は無視して構わない、しかし、二回目以降着信があったときは非常事態ということになるので出なくてはならないのだ。
案の定二回目の着信はなく代わりにメールが届いた、置き時計を見ると午前十一時半今日は土曜だが、午後から二時間の授業があるそれに行かなくちゃいけないとなると面倒だ。
一応制服に着替え、軽い食事を取り家を出た授業は一時からだがその前に寄るところがあった。
都内のこれといって特徴の無いマンションに住んでいた、最近変わったことがあったとすれば住んでいるのが24階の部屋だというのにエレベーターが故障した、ということくらいだ。
あたり前の日常、違和感もないさっさと目的地のじいちゃんの家に向かおう。
今身近にいる血のつながった知り合いはじいちゃんだけ、母は自分が今住んでいる東京の近く関東付近にはいないし、父には会ったこともない。
父の親であるじいちゃんに父の事を聞いても上手く誤魔化されてしまう『その答えはいつかわかる日が来る』と言って。
はっきり言っていまだにわかっていないが、そのいつかはきっと死ぬまでの間のいつかなのだろう。
だからもう、じいちゃんに父の事を聞くのはやめた自分で真実を探すために。
父の名前は和田悠人、父の名前はじいちゃんが思いつきでつけたらしい。
俺の名前はルカ、実は生まれる前までは女の子だと言われていたらしい、もちろん正真正銘の男だ。
じいちゃんの家は広い一軒家に一人暮らし、なぜこんなに広いのに一人で住んでるの?と昔小学生六年の時に聞いた時は、じいちゃんは笑顔で『昔はこの家に仲間住んでいたんだ、今はいないたくさんの仲間と』と言っていた。
はっきりいってじいちゃんはツッコミ所はあっても、つかみ所がない一度だけ母にじいちゃんについて聞いてみたことがあった。
しかし、母もじいちゃんについては『つかみ所がなくて雲みたいな人』と言っていた、何故かは知らないが母はじいちゃんを嫌っているらしい。
そこ事に関してじいちゃんは『それはしょうがない事だな~』とか言ってた。
今日は二ヶ月前に迎えた誕生日のプレゼントを渡し損ねたじいちゃんの元へ行って、約束の品を回収しに行くという内容だった。
プレゼントの内容は、自分に役に立つ物だとだけ言われていた。
※
家に着くなりポンッと木刀を渡された。
「なんだこれ」
「役に立つ物と言ったはずだが?」
「人を二ヶ月も待たせておいて渡す物が木刀一本!?」
「お前に教えた剣技は人を殺める為に教えたんじゃないんだが、安心しろ中身はしっかり真剣が入ってる」
言われて木刀の刀身と柄の部分に手を付け放すと、中からまばゆい程の光を放つ白銀の真剣が現れた。
「刀身はほとんど銀だ強化加工はしてあるが、使い方によっては簡単に折れるから気をつけろよ」
「使い方って言っても使うことはない、と思う」
「だろうな、もしかしたら使うことがあるかもしれないがな。
ルカついでにこれも持っていけ治癒用の回復玉だ、なにかあったときの保険にな」
「なにがあったんだ、いつもならこんな物渡さないだろう」
「久しぶりに悪夢を見てな、少しだけ嫌な予感がするだけだ」
じいちゃんが見た悪夢俺が見たものと関係があるのだろうかなぜかはわからないが、少しだけ胸騒ぎがする。
※
じいちゃんから収納用の布袋(縦長の)を貰い中に木刀をしまい、回復玉は収納用のケースに入れた。
じいちゃんと軽い試合をしているといつの間にか十二時半を回っていた。
ここから学校までは歩いて数分もしないのだが、足早に家を後にした。
じいちゃんには刀には自分で名前を付けたければ付ければ良いと言われた、一番いいのは使う時に名付けることだとも言っていた。
「おはよう」
そう言って教室に入るとクラスのやつ二人に囲まれた。
ここでの名称はモブA、モブBくらいにしとこう。(決して名前が思いつかなかった訳じゃないんだからね)
「今日は珍しく来るのが遅いんだな」
「オイラ達とうとうルカが美咲殿と思いを遂げられたのかと思ったぜ」
「おいやめろ、お前ら一体人のことをなんだと思ってんだ」
「「リア充という名の爆散すべき目標」」
「おい」
冗談だよ冗談、と言いながら笑って誤魔化す二人に絡まれていると、後から一人の女生徒が入ってきた。
モブの二人が、あ、と言って何かを察したように去って行った。
あいつらは一体全体友達の少し上を行く幼馴染みという関係になにを求めているんだ。
(幼馴染み=異性なんて現実世界じゃ幻想なんですわよね:by筆者)
「おはよう、ルカ君」
「おはよう美咲」
彼女が神楽美咲、ただの幼馴染みだそれ以上でも、それ以下でもない。
黒髪のロングは個人的にもろ好みなのだが、昔から一緒にいたしたまーにお風呂とか、入ってたから恋愛対象にはちょっとって感じの立ち位置にいるんだよね。(と、主が申しております)
※
放課後なんだかんだで時計を見ると4時になっていた、ほとんどの生徒は学校にはいない、珍しくこの時間まで残っていたのは担任に面倒事を押しつけられていたからだ。
(注:ルカ君はおじいちゃん譲りで頭はいいようです、裏山氏)
頼んだ訳じゃないが、美咲も手伝ってくれていたおかげで、(やる気の問題で)朝まで掛かる作業がもう終わってしまった。
「ありがとう、美咲手伝ってくれて」
「うん、多分ルカ君が一人でやってたら朝まで掛かっちゃうでしょ?」
「多分かかるかな」
はっきり言うなら月曜日までに終わってればいい事だから、月曜の朝までかかりますね。
「あ、そういえば明日暇?」
「うん?時間は空いてるけど」
「なら、夕方から時間空けといてくれよ」
「いいけど、お母さんになんて言い訳しようかな」
俺とは違い親と共に引っ越しというか、たまたま引っ越し先と母に飛ばされたあのマンションから通う学校が同じ、ってことで小中高と同じになったわけだが。
母の条件は近くに身内がいることだったのだが、自分はここを動きたくないしじいちゃんにも会いたくない、そういうことでじいちゃんのいる東京へと引っ越したってだけで、ほんとにたまたま美咲の引っ越し先と被っただけなのだ。
母の条件ただ一つはじいちゃんと一緒には住まないことだそうだ。
「おばさんには俺からも言っとくか?」
「だ、だめっ!ぜったいにそれだけはだめ!」
急に美咲が顔を赤らめて慌てた様子で拒否してきた、俺の記憶が正しければ俺みたいに親と仲が悪いわけでもないはずだが、喧嘩でもしてるんだろうか。
(男にはわからない女の子の気持ちってヤツですね。あ、おれもわからないけど可愛い女の子の気持ちいがい知りたいと思わぬ:by馬鹿な筆者)
「な、なら上手く言い訳して出てこいよ」
「う、うん頑張ってみる」
「じゃあ、詳しくは後で連絡してくれ、俺これから銀行いけないといけないから」
「うん、また明日」
そう言って俺は教室を後にした、母からの仕送りの生活費を銀行に行って降ろすために。
生活費とは言うものの、母は仕事してないし一体全体どこから金が入ってくるのやら。
はっきり言って二ヶ月ごとの仕送りの金額が100万、遊びにも行かないし使い道などないため二ヶ月あっても半分も使わない。
しかし、なんだかんだで金を返すのもしゃくにさわるので残ってることなんて言わない、最悪会って困る物でもないし、卒業してから遊ぶのに使ってもいいかなと思っている。
今日銀行に行くのは食費ではなく明日の交通費の為だ、といってもすぐ近くだから二人分としてもそんなにはいらないのだが。
※
銀行に着くとATMはかなりの人数が並んでいた、急いでる訳でも忙しい訳でもないからたいして気にはならないが、普段は混まない時間に混んでいるのは不思議に思った。
人が少なくなるまで座っていようとイスに腰掛けた、携帯を見るとメールが二件両方とも母からだった。
内容は朝の電話の件と母の家に届いた手紙を送るというものだった。
真剣にメールを見ていたその時だった。
「強盗だ!今すぐ金をこのバックに詰めろ!」
と言う声と共に銃声が鳴り響いたのは。
「全員床に手をついて伏せろ、手は頭の上だ」
数は5、全員目出し帽をつけ二人がオートマチックガン、三人がサブマシンガンを装備していた。
こういう時、昔こんなのを相手にしてたと言っていたじいちゃんならどうするんだろうか。
ていうか、冷静に考えると昔から銃持った危ない人相手にしてたとかどういうこと!?、まさか元ヤ◯ザ?。
色々と考えている内に強盗の一人が銃を突き付けて近づいてきた、軽く辺りを見回すと伏せていないのはどうやら俺だけらしい。
「おい!お前これが目に入らねぇのか?」
「いや、逆に目に入るなら見せて欲しいんですけど、流石に物理的に無理じゃないですか」
物理的に(真顔)。
「それと、人を脅す時は威嚇射撃とか銃突き付けるよりは死なない程度に当てた方が効果あるよ」
その言葉と同時に手持ちの木刀を取り出して、強盗の腕を強打し手から離れた銃を掴み、足を掛けて頭に銃を突き付け返し首を木刀で身動きが取れない程度に首を締めた。
「貴様、そいつを放せさもないと、、、」
「さもないと?」
バンッ、と言う銃声と共に人質の男の足を撃った。
「そいつを放さないと人質を撃つぞ!」
「撃てばいい、少なくとも俺の命じゃない、もっともその銃で撃てれば、だがな」
「なんだと?」
「俺が持ってるオートマチックガンとそっちにいるもう一人がもってるこれと同じ銃、それ以外は偽物だ、二十年も前に製造及び販売を停止した銃で人を脅すには流石に無理がある」
「もし、その予想が外れてそちらを蜂の巣に出来るとしたらどうする」
「俺の目の前に、何のために俺より一回りデカい盾があると思ってる」
盾、とはつまり先程足を撃った強盗の仲間の一人の事である。
「サブマシンガンのマガジン内容量なんてたかが知れてる。
負けがわかったなら大人しく捕まった方が身のためだ」
「わかった、大人しく捕まろう」
強盗五人に縄をつけ外に出るとパトカーが六台ほど止まっていた、防弾盾と重装の警察約十五名全員が銃を向けていた。
「大切な市民を無傷で助けてくださりありがとうございます」
メガホンを持ったスーツの女がしゃべり掛けてきた、本当に感謝してるなら前からだけじゃなく、後ろからも向けられている銃を下げて欲しい。
「演技か、随分と最近の警察はリアルな訓練するんだな、でも、客まで警官なら訓練の意味ないんじゃないのか?」
「銃刀法違反で逮捕させていただきます」
「銃刀法違反ってのは銃か刀持ってるときに有効なんじゃないのか?、俺はどっちも持ってないかな、この銃は俺のじゃないし」
「銃では無く刀の方です」
そう言って木刀をとられ、中身を出された。
「立派な銃刀法違反ですよ」
カチャッと手首に手錠を付けられた、流れるように車に乗せられ、警察署へ。
※
「なぜ刀なんて持っていたんだ、大人しく喋れ!この辺りで刀による殺しが三件も出ているんだ、お前だろ!犯人は!」
「ちげぇーってんだろ、くそ野郎てめぇ言いがかり付ける前に、カツ丼出せカツ丼!こっちは、
「カツ丼ならさっき届いたぞ、上のカツは店が乗せ忘れてご飯だけ届いたぞ」
「いるかそんなもん」
取調室で言い合いをしていると、ドアが開き先ほどのメガホン女が入ってきた。
「取り調べは終わりだ、そいつは特務官の身内らしい、特務官曰くそいつが刀を持ち始めたのは今日だそうだ。それに、刀のサイズが被害者の傷とは一致しないらしい」
「そうだぞばーかばーか、おまえのかーちゃんでーべーそー」
「てめぇ、この野郎言い訳が子供っぽいぞ」
「いや、実際子供なんで」
「くうぅ、調子のいい奴」
「釈放だろ?さっさと手錠外せよ」
「外で特務官が待っている、まぁ、親族はいたわることだな」
取調室を出ると、そこにいたのはじいちゃんだった、元の仕事は聞いていないが定年過ぎてもお偉い様ってことは相当な仕事をしていたのだろう、ということはヤ◯ザではないようだ。
「じいちゃん、けっこう偉かったんだな」
「昔の仕事のオプションだ」
「まぁいいけど、助かったから」
「今日はもうまっすぐ家に帰ろよ」
「うん、わかった」
※
家に着くと服を着替えた、明日の交通費は財布に入ってる金額だけで多分足りるだろう。
今日は色々と疲れた、真剣渡されたり強盗にあったり警察に捕まったりと、精神的にも体的にも心身ともに疲れ切っている。
ソファに腰掛け一息つくと、まぶたが重くなってきた、明日の用事は夕方からだしこのまま寝てしまっても問題はない。
そう思うと気が楽になり、いつの間にか睡魔につられ眠っていた。
-あとがき-
未来編の始まり!ということで投稿が早い!なんてことはないです(未来編は番外編やる前に書き溜めしてた)。
相変わらず誤字が多いんですよねwカクヨムの方だけでも修正しようとは思ってるんですが(ショウセツカニナロウは編集の仕方がよくわからない)。
次回からは皆さんお待ちかね(?)ミスリル編と並行して未来編を進めていきます(多分ミスリル編9未来編1くらいの割合で進んでいく)。
生活リズムがいまだに通常に戻らなくて学校での授業中がつらいのなんの。
投稿ペースがこれからもっともっと遅くなるとは思いますがよろしくおねがいいたしますね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます