さよなら水たまり

 新しいサックスブルーのワンピースがしとしと濡れていく。

 アスファルトの上の浅い水たまりをパンプスで渡る。水面が乱れて赤い傘の輪郭は不確かになった。雨の日でも明るくいたくて華やかな色の傘ばかり買ってしまう。空が泣くならわたしも泣けばいいのにね。

 別れ話はいつもこんな天気だ。感情ごと押し流すような大雨でもあっけらかんとした晴天でもなく、中途半端な雨のなか。

 いっそ長靴を履いてくればよかった。子どもみたいに水たまりを蹴って歩けばいくらか気が晴れそうじゃないか。赤い傘かかげて小さく跳んだ。浅い水はつまらなそうにおもてを揺らす。

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