緑
森の大気は湿りを帯びている。荒れた足下にはシダが生い茂り、山道に疲れた自分たちの荒い息が耳につく。
「なぁ、いつになったら村に出るんだ」
「道は合っているんだ。予想より時間がかかっているからといって愚痴ばかり言うな」
先行するリーダー格の男は、疲れの色を抑えて淡々と答える。わたしは額の汗を手の甲でぬぐって深く息を吸う。酸素が足りない。こんなことなら日頃から鍛えておくのだったと思うが、自分が筋トレに励むところは想像できない。
真昼ではあるが、枝葉に遮られて陽の光はほとんど届かない。にもかかわらず気温は高く、纏いつくような高湿度だ。水を飲みたかったが、わずかでも歩く速度を落とせば置いてけぼりを食いそうだった。
しばらくすれば休憩があるはずだ。それまでに倒れるようなことにはなるまい。草木に浸食されそうな細い道は、いっこうに先が見えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます