亡星の姫

なな子

第1話

しくじった。この俺が。詰めが甘かったというのか。8年かけて住民の信頼を勝ち取った。馬鹿な住民共は俺が星盗りを目論む野心家な男だと気づくはずなど無かった。

何をしくじった?信じた?部下を?この俺が?なぜ?


なぜ……俺は人を信じた?


傷だらけで息も絶え絶えに歩くこの男、名はエベルハルトという。炎の惑星「ジャーマ」の王に取り入り、8年の歳月をかけて城の人間、住民の信頼を勝ち取った。彼は3日前ジャーマの王になるはずだった。計画は完璧だった。だが、彼は王になれなかった。なぜなのかは彼にもわからない。

幸か不幸か、彼は生きながらえた。ジャーマから2つ離れた水の惑星「アグア」へ落ち延びた。

水の惑星というだけあって、ここは水が豊富だ。だが、水といっても海水である。そのため彼は喉の渇きすら潤すことができない。


彼が数m先で焚き火をする、マントを被った小さな人影に話しかけたのは、彼がその小さな人すら殺す余力が残っていないことを物語っていた。


「なぁ……水を分けてくれねぇか。」

「うん、どうぞ。おじさんボロボロだね。好きなだけ飲みなよ。あ、魚も食べる?」


小さな人影はマントを脱ぐことはしなかったが、声からして少女だろうとわかった。そして、ボロボロになった一見恐ろしい長身の男に警戒もしない無知な少女だということも。


エベルハルトは今はその無知な少女に感謝して喉を潤した。このガキなら俺を殺せはしない、とその安堵からか、3日間飲まず食わずで落ち延びた疲れからか、恐らくはその両方で、彼は意識を失った。

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