『彼』が喪服を着た理由

霜月二十三

『彼』が喪服を着た理由

 彼は訪ねてきた女に殺してくれと頼まれ、女を殺した。

死んだ女の髪とお揃いの緑色をした、彼の瞳が女を見つめる。

女は彼の魔法ちからで作られた毒で死んだおかげで眠るような死に顔だった。

 そっと女の頭を撫で、鼻に口付けた後、彼は買い物するため、つばの根元あたりに白い金属のまるいピンバッジの付いた灰色の帽子をかぶって外に出た。


 空を見上げると、彼の肩にかかるか否かの長さのまっすぐな髪とお揃いの暗い灰色の雲が出ていた。彼は成人おとなの女よりも小柄な体で、眉まで切り揃えられた前髪と相まって幼く整った顔立ちをしているが立派な二十歳以上おとなだ。ウォッカを買いに行ったって誰も責めない。


 彼はウォッカを買って家に帰り、椅子に座った女の人形の前で夕食を食べて、スクリュードライバーを一杯分作り、その半分を女の前のグラスに注いで乾杯をする。

 自分の分と女の分を飲んだ後、女の人形を抱きしめて歌いながらスキップで自室へ向かい、着替えもせずにベッドに寝転びそのまま眠った。

 翌朝、食事を済ませた後、彼は喪服に着がえた。ベッドに寝かせた女の人形の髪を撫でた後、彼は聖女交代式へ向かった。


(463字)

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