プロローグ2
ある夏の日、私の住む村にこんな御触書が出回った。
『王都の広場にて、聖剣を引き抜いたものを勇者とする。』
17になったばかりのゆめみがちな子どもたちにとっては本当におとぎ話のように感じられた。
早速、村の友達数人で王都へむかった。
広場につくと何千人もの人で賑わっていて、
その中のなんと3割近くの人が聖剣を抜くためだけに王都の広場に集まったのだ。
聖剣は広場の中央の岩に突き刺さっていた。
すると、人混みの中から一人の屈強な男性が名乗りをあげた。どうやら彼はこの辺ではかなり名の知れた冒険者らしい、みるからに強そうな風貌をしていた。
彼は、剣の柄を両手しっかりと握ると力いっぱい上に向かって引っ張り上げた。
私たち観衆はそれ見て驚愕した。
冒険者と比べると剣の大きさはかなり小さく見える、しかし、剣は全く動かないのだ。
それは、彼が赤い顔をして倒れるまで続けられた。
冒険者が失敗したのをみて、参加者たちは尻込み始める、そして何人かが名乗りをあげたが、結局最初の冒険者と同じ結末だった、
なかには笑いを取るために剣を抜こうとするものまであらわれた。
しばらくすると友達が冗談半分で剣のもとに行き、失敗して笑いながら帰って来た。
「あんたもいってくれば?」
私はその軽い冗談に付き合って広場の真ん中へ行き、剣をつかんでおもっいっきり引っぱりあげて尻餅をついておもいっきり笑った。
私は、友達のように観衆たちに笑われると思っていた。しかし、観衆は笑うどころか、目を見開いてこっちを見ている。私は自分の右手を見た。
そこには誰にも抜けない筈の聖剣がにぎられていた。
広場の静けさがやがて、地を揺るがすほどの大歓声に変わった。
そして、私は勇者になった。
それからは、展開が急すぎてよく覚えていない。
王様の号令のもと、盛大な任命式が開かれることになり、私は全く似合いのしない豪華なドレスを仕立てあげられた。
そして、任命式当日、私は顔も知らなかった王族や貴族、精一杯着飾ってきた村の人たちや一般民に見守られて、この国の正式な騎士となった。
慣れないパーティーやドレスなどに頭をクラクラさせ、王様のありがたくつまらない話を聞き流しながら私はとても面食らっていた。
気づくと話は、終わっていた。どうやら私はこれから魔王をたおす冒険に出掛けなければいけないらしい、しかも私に拒否権はないようだ。
すると王様が、誰かの名前を呼んだ。
そして階段を登ってくるのは腰に剣を下げローブに身をつつんだどこか少年のようなあどけなさを残したくせっ毛の強い美青年だ、どうやら彼はこの国で一番の実力を持つ僧侶らしい、年は私と同じのようだ。
王様が何かをいっている、簡単にまとめると私はこの僧侶と旅に出るらしい。私が驚愕に顔を固めていると、彼は爽やかな声で私に挨拶して、手を差し出してきた。私もつられるように挨拶をし、手を差し出した。
私たちが握手をすると王様を含む私達以外の皆から一斉に拍手と歓声が浴びせられた。両親が泣いていたのをおぼえている。
そして、その1週間後私たちは冒険の旅に出た。
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