【掌編(半エッセイ)】ラッパ飲み(梅田卓男の課題、頁42〜43)

 気温が27度を越すと、自分の水分補給は頻繁になる。

 対処法は、ラッパ飲みだ。二リットルのペットボトル(好みは緑茶)を買って、豪快に傾ける。

 ドボドボと気泡を打ち上げて飲むと、不思議な開放感がある。

 で、これに関連する記憶がある。3歳の自分がした、ラッパ飲みの記憶だ。

 法外に喉が渇いていることを示す方法を、幼い直感で考えての結論が、ラッパ飲みだった。

 缶ビールのCMを、派手に真似てやろうと悪戯心が作用してもいた。悪戯ついでに、自分は食卓に起立して飲むことにした。

 自分は心底興奮した。緑茶のペットボトルを「うンしょ」と両手で抱え、口の上空でひっくり返した。

 しかし、3歳児の口には、緑茶は多すぎた。自分は文字通りにお茶を「浴び」た。カテキンのにおいを醸すことになった。

 親は当然、説教された。

 いまの自分は半時間もあれば、二リットル容器を空に出来る。しかし、あのときのように喉を鳴らすことは、出来ない。


【了】(393字/上限400字)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る