バイトの休憩中にしか使えない俺のチート能力

ねる

序章 プロローグ

 


 これと言って特徴の無い平凡な大学生がバイトの休憩中にだけチート能力を使える様になり、波乱万丈な人生に変わっていく……。


 バンド『美しいねお嬢さん俺とお茶しない?』のボーカルをしている大学生。

 ま、その話は割合させてもらうとして、問題はチート能力の方だ。


 この大学生が働いているコンビニ。そこは社員含め7名しか雇われていない超絶人手不足に見舞われているコンビニだ。

 休憩室は店長監視の元、約三畳の事務室で取る事になっている鬼畜なバイト先。


 パーソナルスペースの広い彼にとって、休憩中が一番苦痛だった。

 眼鏡をセロハンテープで固定している店長と会話させられ、背もたれが無い椅子に座らされ、携帯触ると絡まれ……





 ーーーー居心地が悪すぎる。





 彼はこの日、ミッションを決行する。

 その名も『休憩を外で取る』スペシャルミッションだ。

 難易度はA級ぐらいだろう、少年は勇気を出し、店長に告白する。


「あ、外出てきまーす」

「りょぉ!ぜぇぜぇぉぇぇ……」


 普通にオッケーを貰えた。

 店長が息切れしている事は触れないであげて欲しいが触れよう。

 俺達は週6~7、一日10時間勤務は当たり前!昼の12時から次の日朝8時までする事もある。

 誰かがインフルエンザなどに感染したら大問題だ。緊急招集が掛けられ、社員、バイトで会議が開かれる。

 そのおかげでこの大学生の給料は並大抵の物ではない。

 平均、月150万を稼いでいる。



 その大学生はコンビニの裏にある『シャチく公園』で休憩を取る。


 真昼間だが、人通りは少ない。

 砂場とベンチしかない公園に遊びに来る子供も居ない。


「あー、休憩って感じするわぁぁ」


 独り言を少し大きな声で言っても周囲の目は気にならない。何ていい休憩場所なんだ。


 この日以来、公園が彼にとって、定位置になっており、毎日ここで休憩を取っている。


 ある日の休憩時間、彼は公園にやってくるが、怒っている。それも無理はなく、朝6時から15時までというシフトだったのに、20時までに引き伸ばされたからだ。



「あぁぁ!!くっそぉぉぉお!」

 彼は公園にあった石ころを蹴った。




 ズドドドドーーーッッン!!





 その石ころは公園のベンチを貫通し、公園の壁も貫いた。状況理解が出来ていない彼は恐怖心を抱いた。

 後ろから何か、いや誰かが迫ってきている感覚があるからだ。


 後ろを振り返ると大きな風の音と共に竜巻が彼の方に飛んできていた。


「ええええええ!!うそだろおお!!!?」




 彼の頭に物体が直撃し、おでこにのめり込んだ。まるで37連勤してる俺の辛さ、苦痛、憂患さを爆発させたぐらいの痛みを伴った。


「うぅ……なんだこれは……」


 彼はその物体を持ち、推測をし始めた。

 蹴った石ころが世界一周したんじゃないか説あるんじゃないか?と。

 もし、この物体が石ころなら、世界征服出来るんじゃ……サッカー選手になれるんじゃ……色々夢を膨らませる。


 遂にアニメとラノベの読みすぎで頭が可笑しくなったのか。と思いたいが、物理的に石ころが飛んできてるから信じざるを得ない状況だ。



 それから、彼は上空に石ころを蹴ったりしてこの力を分断に試した。空から降ってくる石ころが落ちると地面に穴が空き、衝撃波が襲ってくる。


 鬼の様な37連勤目で今日14時間勤務が終わり、公園に彼は戻る。


  「ちょっと俺のキック力試すか」


 今日、彼女と急遽ハワイにデートに行った社員のせいで残業を強いられた俺はまだ許していない。


 彼は思い付く、ミッション……難易度はB級と言った所だろうか。

 空に向かって石を蹴り飛ばし、コンビニの屋根に命中させてやろうじゃねえか!!と彼は考える。



「コンビニ潰してやる!」

「いっけえええええおおおお!!!!」


 疲労に疲労を重ねている彼だが、物凄く覇気があった。このコンビニが潰れれば辞めれると考えているからだ。



 石ころは約4mほど飛んで普通に落ちた。



「ーーーーえ。」



 その後何回も試したが、結果は変わらず、明日もバイトがある為家に帰宅する。


 家に帰り、速攻で寝て朝4時半に起き、バイトに向かった。



 ーー休憩時間になる。


 当然、公園で休憩を取るのだが、疲労が溜まりすぎて睡魔に襲われる。

 公園のベンチで横なる大学生。


「あぁ……今日も客多かったなぁ……」


 愚痴をこぼし、眠りについた。



 …………



 〈やっと会えました〉


 ーーあ?あれ、声が出ねえ。


 〈私はこの世界の女神をやってます〉



 死んだのか?いや、もう死んでても良い。と軽くこの状況を飲み込む大学生。



 〈貴方が休憩時間に眠ると必ず私が出てきます〉


 ーーなんだそれ。怖すぎだろ



 〈そうですね 助言しておきます ステータス確認は絶対しておくべきで……〉




 …………



 アラームが鳴って目覚めた。


 もう休憩時間の1時間が終わりを告げた。彼はだるそうな目を擦りながら今見た夢の事を思い出す。


  ーーーーステータスって言ってたな。けど、どう確認すりゃ良いんだよ……


 大学生が心の中で疑問を持っていた。


(キーワード ステータス感知しました)


 彼の頭の中で声がする。幻聴なのか、誰かに呼ばれているのか判別は出来ないが、その声はロボットみたいだ。



(ステータスを表示します)


 …………


 黒沢 やす lv.1 通り名:売れないボーカル


 HP 340/690

 MP 20/20


【スキル一覧】

 ・バイト休憩中女神対面

 ・バイト休憩中能力解放

 ・バイト休憩中想像した能力解放




 …………



「はぁぁぁあ!?異世界転生とかそーゆうのにしろよ!!ってか売れないボーカルってなんだぁぁぁあ!?舐めんな……」


 睡眠不足の彼は一人でステータスに怒鳴り、この能力を考えながらバイトへ戻った。



 これから何が起きるのか知らずに……

 そして、自分の存在、人格、その全てをかき消されているという現実に気付く事すら出来ない存在……。






※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




何も無い真っ暗闇で牢獄の様な場所。



『憎し、み、ですね、憂いで、すね、寂寞、寂寥、虚無……極地に追い込ま、れたその気持ち、その感性、感情、は……自棄です、か?失望ですか?絶望で、すか?傷心ですか?哀切、です、か?長嘆します?か。痛嘆します……か、ウゥぅぅ……』





『ーーーーフフフフッ』






『……痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い……』


連鎖は止められない。連鎖は辞められない。1度続くと止まらない。1度も止まることがない。





ーーまた、犠牲者が増えていく。







※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

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