第466話証言を翻す社員

透析が終わって女房からメールが入っていました。

「父は肺がんと診察されたけど年齢もあり手術も抗がん剤も使わないことになりました」

それを見ながらNPOにぶらぶら歩いて出かけます。

私は自分の机に座るとフーリーペーパーの原稿に目を通します。

先日の労働裁判に係わる教室の開始の記事が上手くまとめられています。

透析は一生ものですが労働裁判は遂に終わりましたが何ともしっくりしません。

携帯が鳴って珍しい名前が写しだされました。

何と同じ時に懲戒解雇なった出向先の社長です。

彼の場合は刑事事件となりまだ最高裁まで戦っているようです。

私も何度も彼の側に立ち法廷に立ちました。

「久しぶりですね?」

会わなくなってもう2年になります。

「ああ、一度有利になっていたのが高裁で仲間が相手側の証人になって逆転してしまったのだ」

「また社員絡みですね?」

この会社はオーナーがワンマンなのですが、問題は社員が互いに蹴落とす体質なのが問題です。

それに私の裁判の経験からも裁判官が社会の実態を全く知らないのがさらに大変です。

「もう一度最高裁に出てくれないか?君の証言を別の社員が否定しているのだ」

「実は私はもう和解をしているのです」

私は労働裁判では誰の証言もしてもらわなかったのです。

それは安易に証言を翻す体質を恐れていたのです。

それでコツコツ集めた事実を積み上げ4年も戦ってきたのです。

「室長何か憂鬱そうですね?」

「いい記事になっているな」

と編集長に原稿を戻します。

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