第467話思い出せない空白の時
今日は透析の後昼食抜きで公的融資の保証会社に出かけます。
このNPOは私が来た時からいつの間にか融資担当になっていました。
最初はNPOの融資と言うことで難航をしましたが、今では決算書を説明するだけで容易になりました。
今日も1時間ほどの説明で内諾を得ました。
時計を見て慌ててタクシーを捕まえます。
「遅れましたか?」
約束のホテルのカフェレストランにもうすでに理事長と帽子を被った男性がビールを飲んでいます。
「久しぶりだなあ?こんなところで出会うなんて?」
彼はITバブル時代にライバルで頑張った仲間です。
「東京に本社を移したと記憶していますが?」
「君の会社に上場の準備で先を越されていたので思い切って東京に出てM&Aをしたのだよ」
あの頃のことはぷつんと途切れてしまっているのです。
上場前に乗っ取り騒ぎが起こり、私は急性胃潰瘍で救急車で運ばれ、
その後の検査で膀胱がんが発見され、その抗癌治療の末腎不全になってしまい今透析をしているのです。
その間3年間で会社は潰れすべて夢は消えました。
もちろんそんな話は誰にもしていません。
「そうか上場したんだね?おめでとう」
と自分のことは話さず笑って誤魔化しました。
このことは私が墓場に持っていくものなのです。
「今回今のフリーペーパーのネット配信を提携したいと」
理事長が提案書を見せます。
私は彼の会社の120憶の売り上げを見てまだ昔のことを考えてしまっています。
「編集長とも相談して個別に担当者と打ち合わせしたいんですが?」
「いいとも、出来たら得意のアイディァを頼むよ」
そう、私は訳の分からないアイディァで有名だったのです。
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