第370話半農半x
透析中は先生や看護婦とは短い会話をしますが、患者とはほとんど口を利くことはありません。
私の隣のベットにいる人は私より5歳くらい上の男性ですが、どうもいつも機嫌の悪そうな顔をしています。
「頭はどうですか?」
「こぶが小さくなったようです」
「今日も仕事に?」
「いえ、シニアNPOの砂栽培のハウスの入れ替えを覗きに」
透析も1年が過ぎて4時間を持て余すことはなくなりました。
透析を済ませて着替えている時に、その隣の人が珍しく声をかけてきます。
「透析していて仕事なんて出来んやろ?」
「そうでもないですよ。もちろん定時の仕事はできませんが。歳は?」
「61歳や」
「私と同じですね!これからハウスを見に行きますがどうですか?」
「こんなに歩いてどうなのかね?」
「いえ、歩くのが今は仕事の一部です」
「いや!苺の後は?」
ハウスの中には葡萄園の彼が先輩の理事長も交えて5人ほどが作業をしています。
「これは生徒が作ったトマトの接ぎ木の苗の芽搔きをしてるんですよ。お友達もどうぞ」
「今年はみんなの意見でアイコやミニや桃太郎や大玉など5種類を作ったんや」
「そのキャップがかかったのは?」
「西瓜の苗です。これは編集長にビデオ撮りをしてもらっていますよ」
「なんか面白いなあ。これが半農半xかあ」
透析の同窓生は夢中になって芽搔きをしています。
「少し1杯行くか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます