第322話墓穴を掘る
余計なことを言うべきではなかった。
透析が終わった後、約束のH税務署の階段を上がります。
ここには刑事訴訟の証人になった頃任意の呼び出しがありました。
広域捜査と言って奥まったところに部屋があります。
「いやあ、度々すいませんね」
保険のセールスマンのように愛想がいい同じ人です。
「お宅の会社の経理課長が訪ねてきましたが、会社から損害賠償の民事を起こされたようですね」
「私のところに何度も来るので困っています」
「確かに調査に出かけた時に何度も彼とは話しています。何を聞いてもし知らない一点張りで困った人でした」
ファイルを出してお茶を勧めてくれます。
「実は前回お宅の証言を貰い1億ほど追徴させてもらいました。疑問点はこの会社は山のようにあるのですが、詰めるにはまだ時間がかかります。彼がいろいろ言っていたのですが、こちらも何度も検討した事でやたらと解任や裁判を起こしていて巧妙に」
「そうですね。私も裁判を担当して吃驚しました。ほとんどの幹部社員が解任や裁判されています。そう言う私もその一人ですが」
「お宅の場合はたくさんの帳面な記録があります。あれは助かりましたよ。でも彼の場合やくざの使い走りと同じで何を言っても記録がないのです。ああいう経理責任者も珍しい。もしお宅の話を聞いていなかったら、私も彼にそのお金何に使いました?と聞きたくなります」
「そちらでは?」
「次の調査の時までには押さえたいポイントはありますが、彼に乗ってしくじりたくないですから。何よりも彼には悪いことをしてきたという意識がないですからね」
まさに墓穴を掘ると言われているようなものです。
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