第306話自業自得

「そんな昔の人達に会って裁判大丈夫?」

女房はいよいよ失業保険が切れるので今日からハローワーク通いが始まります。

「力を貸せるところは貸す、でも労働裁判は力を借りる気はない」

私の労働裁判は半分は社長との戦いですが、半分は社員同士の足に引っ張り合いです。

今日は初代の専務に会うことになりました。

指定した喫茶店の窓側に白髪の始めて見る男性が掛けています。

「無理を言ってすいませんなあ」

「元支社長の女性と話されたようですね?私は裁判資料でしかその頃のことは分かりません」

「いえ、吃驚しました。私もまた総務部長に足を引っ張られ、社長に脱税の材料にされたのですね」

と言いながら封筒から当時の自己都合の退職願を出して見せます。

「それは会社のファイルに入っていた退職願とは違いますよ。私が見たのは自筆ではなくパソコンで打たれたもので、詳しく不正の金額が書き込まれていてこれは変だと思いましたよ。印鑑は同じだったと思いますが?」

「これは実印です。確かに私が使い込んだのは事実ですが、あの頃の社員会はそれぞれの上司が個人名の通帳で管理していましたし、慰労会などはそこからから出してました。自分の飲み代で使ってしまったのは300万ほどで大半総務部長と同席だったのです」

「私が見たのは1億近い金額でしたよ。印鑑は?」

「退職の資料もあると総務部長に印鑑を預けました」

「それにその退職願に経理課長の調査の結果間違いありませんと印鑑もありました」

「へえ!彼は最後まで私の味方だったと」

「今度は彼が同じ目にあっているようです。自業自得ですね」

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