第307話裏切り者

透析後年金と労働裁判の仮払いを引き出しに銀行を回ります。

「今少しよろしいか?」

経理課長の担当弁護士です。

「2審がありましたが、膨大な資料が会社側から出てきています。本人は全く知らないと言うものもかなりありますが、証明の手立てがありません。経理部の部下は全員会社側ですし、辞めた係長も連絡にも出てくれません」

「彼は社内ではいびりのご本尊だったし、仕事は抱え込んでいてまったく何をしているか分かりません。その割には仕事の全体が分かっていないで危ない部分をやっていましたね」

「確かに何が危ないかの知識がないようです。だから自分を助ける証拠保存が全くないのです」

この会社では放り出されたら孤立無援です。

それに放り出された同士組むのも危険です。

いつ裏切られるか分からないのです。

これは暗に社長の会社運営術のようです。

「彼から言うと唯一詳しい事実を証言できるのは前の専務だと言うのですが?」

「先日会いましたが、協力はしてもらえないでしょうね」

「どうしてですか?」

「彼は当時の専務にとって裏切り者でしかないのです。その話は聞きましたか?」

「いえ」

「私の懲戒解雇の複線には彼がいます。これは感情的に見て到底協力は無理です。彼はそこをしっかり考え直さないとダメだと思いますよ」

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