第274話自己破産
「裁判いつ終わるのかしら?」
出がけに背中で言われて歯を食いしばって外に出ます。
覚悟をしていましたが懲戒解雇されてからもうすぐ2年を迎えようとしています。
透析が終わってから近くの喫茶店でホテルの社長と久しぶりに会います。
「どうですか?」
「先週裁判所で尋問を受けたが相変わらず向こうの弁護士は私と専務が乗っ取りを企てたと言っている。だが証拠という証拠はすべて潰してる。でもよくもいろいろ出してくるなあ」
「こちらも労働裁判も同じですよ。今回は下請けの工事業者のでっち上げの調書を出して来ましたよ」
「あの新潟の業者だな」
私は調書のコピーを見せます。
「最初の工事の時にこちらの会社の専務がね」
苦々しい顔で言います。
「工事発注の条件で100万のバックと1000万の借り入れをしていたんだ。これが分かったのは最近だよ。彼に裁判を起こして証人になってほしいと言ってきたんだ。でも旨く言われてこんな嘘までついたのか?証人になろうか?」
「いや、すぐに反論したからいいよ。そんな事情があったんだ」
「一応自己破産の準備を始めたんだ。いつまでも裁判をしていてもらちが明かないからな」
「こちらは続けるしかないなあ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます