第263話透析人間ベム誕生

「ベランダの水やりして来たよ」

頼んでいた文庫本と旅行雑誌を買ってきてくれました。

「初透析はどう?」

「ああ、いよいよ透析人間ベム誕生だなあ」

「何か楽しみにしているみたい」

どうも昔から厳しい状況を楽しむことで生き抜くことが自然に身についてしまったようです。

「どうしても置かれた状況なのだから暗く生きるのは・・・」

この当たりの性格は長らく女房には理解できないことのようでした。

「毎日何時間するの?」

「今日は3時間だったけど、かなり長いなあ。これから一生続けると考えると恐ろしい」

どうこの時間を自分のものにするかこれが課題です。

「どうも話を聞いてたら週3回、4時間と言うのが一般的だそうだ。ここでシュミレーションをして透析クリニックに移るそうだよ」

「これからなにをするか考えないとね」

「まず毎月の生活費の見直しを考えている。どうしても生活を変えることになりそうだ」

「その話はじっくり聞くわ。これからはハローワークに行ってから区役所で特定疾病療養受領証の申請してくるね」

女房を病院の玄関まで送って体力維持のためにそれから歩き回ります。

病室に戻ると着信と留守電が3件入っています。

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