第241話新たな証拠

帰りに弁護士事務所を覗きます。

刑事告発している不動産事業部長の担当の若い弁護士も座っています。

「進捗を簡単に報告します」

準備書面や調書を広げます。

「向こうが今回現場担当者の工事課長の調書を出してきて一挙に不利になっています。こちらは状況証拠が中心で頼みはK火災なのですが、あちらは民事での交渉で情報が流れて来ないのです。どうもK火災は本気で裁判をやる気ではなさそうです」

「あちらの営業部長が社長と会ったという情報がありますよ」

これは相棒の部長からの情報です。

「なぜそんな行動をとるんですかね?」

弁護士は案外会社常識に欠けるところがあります。

「ご存知のようにK火災はM火災から保険の移行中です。建物だけでなくトラックの保険もあるので大口先です。調査部は不正をただしたいですが、営業部は成績重視です。これは私の経験ですが、最終的には経営判断で和解を選択するのではないかと思います」

「それはあるね」

ベテランの先輩の弁護士が頷きます。

「何か手はないですかね?」

「実は工事課長の部下で現場で立ち会って写真を撮った写真があります。現場の不正な偽装のビフォーアフターがあります。ただ証言は最後の最後にしたいのです」

「それは面白い。取り敢えずその証拠を出すと裁判官に伝えてみては?」

「動きが出ますね」

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