第242話表に出せないこと

3回目の農業実習に日で、残暑が厳しくミニトマトとなすびの収穫をします。

最近は腎不全の症状の尿酸値が上がってきているのか、起き掛けのむかつきがきつくなっています。

「大丈夫ですか?」

目が覚めると作業小屋の軒に寝かされていました。

「どうしたのですか?」

「収穫しているときに急に倒れられたのです。先生は熱射病ではないかと言われていますが?」

「いえ、持病です」

「私も持病があるのでよく分かります」

彼女は今私と同じ机で並んで授業を受けている同窓生で、古民家レストランを目指しているという話を聞いています。

「実習に戻ってください」

「少し私もここで休みます。私はこのクラスでは古民家レストランということで狼少年のような扱いを受けています」

「いえ、みんな憧れていての反発です。でもこれからいろいろ大変なのは事実です」

「事業については教えてください」

確かに彼女には若い割には理解しがたい歴史があるようです。

でも私も含めて表に出せないことをみんな抱えているように思います。

ポケットの携帯を見るとY署の暴対刑事からの伝言が入っています。

「1時間ほど署を覗いてほしいんや」

この一言で自分の抱えている現実に戻されてしまいます。

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