第221話求めるもの

第1回目のシニアNPOの交流会が行われました。

理事長は体調を壊して当日不参加です。

「これは理事長にも再三申し上げてきましたが、今の助成金頼みのパソコン教室だけでは先はありません」

この人は70歳になられた唯一の部長です。

「それはここで話す話ではないですよ」

息子の事務長が声を張り上げます。

「いや今でも遅すぎます。事務長はNPOの決算書をご覧になったことはありますか?」

事務長は取り巻きの若手の顔を見渡しています。

「シニアNPO設立から10年になります。10年連続累積赤字を続けてもう3000万の累積赤字です」

「NPOでは赤字で構わないでしょ?」

「それは違います。理事長の顔で寄付金を貰ったり個人で補てんされているから続いてきたのですよ。でも理事長の友達の理事の方ももう70歳を超えられ引退されて今年も3人が退任希望です」

「でもここで何ができるのですか?」

事務長寄りのパソコン講師です。

「いえ、私も理事長に話をしています。助成金を貰えればなおよしですが、定年退職前研修というのがあります。実は社会では定年退職の後をどう生きていくかに注目が集まっています。趣味を探すというのではなく退職金や年金で生きていけない時代が来ているのですよ」

堪らず口を挟んでしまいました。

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