第160話起訴猶予

今日は内科は予約時間を大幅に上回った大混雑です。

さなかに携帯のバイブレターが鳴ってまた警察からかと画面を覗きこみます。

刑事訴訟の担当弁護士です。

「今よろしいか?」

「はい。息子の拘留の件ですか?」

「そうです。やはり言われていたように息子は表面的な作業者で20日間黙秘を通したようです」

「それでどういう結果に?」

話している内容が内容だけに待合室から廊下に出ます。

「起訴猶予です」

「起訴猶予ってどういう意味ですか?」

「起訴猶予は起訴しないと云うことです。その理由はさまざまありますが、軽微な犯罪。被害者と和解が成立している。反省している。等々です。本来、検察官は独自の判断で起訴ができ、又は、不起訴とすることができるようになっています。この場合息子が作業したことは事実ですが、彼が会社の乗っ取りを意識して行った行為と見ないということです」

「ではこれから?」

「誰が乗っ取りを意識してこの作業を命じたかという判断になると思います。被告の一人ホテルの社長は自白しているから本社の社長を調べたいところですが、息子はとくに父親からのみ作業を命じられたと言っていないのです」

「つまり社内の同意があったと言っているわけですね?」

その後診断の呼び出しに携帯を切りました。何ともあっけない逮捕、拘留です。

診察ではクレアチニンがまた6.83という踏ん張りでもう少し入院は先延ばしです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る