第155話検察へ

Y署の暴対の刑事から夜に慌てたように明日検察に行ってほしいと連絡がありました。

淀屋橋から川沿いを歩いてゆくと、警察署とは比べ物にならない立派なビルがそびえたっています。

「どうぞおかけください」

白髪の混じった横分けの紳士官僚という感じがします。

「2時間少しで終わる予定です。警察でも判断が分かれているところも見られますが」

その横に事務官が静かなパソコンのキーボードを触っています。

「この事件では原告、被告ともに相手を乗っ取りと非難しているわけですが、そもそもホテルの取りまとめの会社ができた時はどんな背景があったと理解されていますか?」

「当時は在籍していなかったので伝聞であるかもしれませんが、当初の管理会社の社長と物件所有会社が家賃の引き下げで揉めたようです。それで話し合いの末に今の社長がホテルの管理会社から送られてきたようです」

「これについては原告と被告のホテルの社長の説明と合致していますが、物件所有会社はそこから仕組まれたと言っています。その中で家賃が高いについては意見が分かれていますが、専務としての調査の結果はどうでした?」

思ったより冷静に見ているようです。

「すべてのホテルは中古物件で、物件購入時に経費が上乗せされて家賃が決まったいるので、実勢の家賃に比べてこの時点から2割ほど高い状態です。そこから5年から7年経過しているので老朽化で実態的に家賃はさらに下がっています。だから結果的に赤字であったわけです」

「被告は黒字と認識していたようですね」

「それについての丁寧に報告をしましたが、意識は別にあったようです。私もこの事件が始まって初めて知ったのですが、本社はどうも当初から会社の乗っ取りで動いていたように」

「ただこの件について原告、被告がどこまで認識があったのかということですね」

ちょうど2時間で終わりその場でサイン押印を済ませました。

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