第154話ホテルの社長の弁護士
女房は5件目で初めての採用面接です。
今後の生活のことを考えると頭が重いです。
私は夕方ホテルの社長の女性弁護士に呼ばれています。
「彼が逮捕されたことはご存知ですか?」
「ええ、刑事訴訟を担当されている先生に新聞を見せてもらいました」
「問題は急に自白になった背景なのです。どうも白から黒に逆転したというのが納得いかないのです」
「元々彼は親父というホテルの管理会社の社長から今のホテルの社長の話が出てきたのです。ある意味では出向社長であったわけです」
女性弁護士は便せんに関係図を書きます。
「それがホテルの所有者の社長は彼を取り込もうとしたわけです。確かに生活には豊かになったと思います。そのうちにとくに意思なくホテルの所有者の社長の指示に従ってきました。だが着実に会社の乗っ取りが始まっていて、彼はそれに手を貸した形になっていたと思います」
「それならよく分かります」
「そういう私もそうです。どうも調べてみてホテルの運営に疑問を感じたのです。どう見ても赤字なのに黒字として報告されている。それで本社の社長に手を上げて出向になったわけです。調査結果をいろいろ報告にまとめました。だが本社の社長はとくに赤字にも無反応でこの時期はホテルの社長に全幅の信頼を置いていたように見えます」
「でも今は使い込み云々と」
「それは訴状が届いてから急に状況が変わったと思います。本社の社長が着々と進めていた事実が公になってきました。私も最初がそれに気づかず、本訴状についてのみの対応を考えていましたが、本社の社長は今度は慌てて乗っ取り作業を急がせました。ホテルの運営などどうでもよかったのです。盛んに周りのイエスマンを動かし始めました。それで専務の私が外され、部長が外され、今度は社長が外されるでしょう」
「要するにホテルの社長は親父さんを採ったと言うことね」
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