第109話歪み

朝一番ホテルの社長が駆けつけてきました。

二人だけで話がしたいというので相棒の部長には事務所で幹部会議の呼び出しの準備をしてもらいます。

「朝本社の社長から直接電話があったのです。珍しいことです」

社長は10時出社ですからおそらく家からかけてきたと思われます。

「裁判のことですか?」

「絡んでいるように思うけど、元経理を首にしろというのです」

「なぜこちらに言わないのだろう?」

「きっと専務が苦手なのだと思いますよ。あの人は右向けと言ったらずっと右を向いているタイプを好みますから。何があったのですか?」

「例の訴状の件です。あの事件の事実関係を報告しに行ったのです。元経理が息子と相談して株式分割の処理をしたのです。だが調べてみたら株主総会も開かず、取締役の同意もとらず三文印で登記していたのです」

「・・・」

社長も困ったように天井を見ています。

「流れからは株式分割の流れは感じます。社長はその時?」

「話は出ていたと思う。でも言ったように総会はなく本社の方でどんどん進められた」

「でも私の感触では本社の社長は細かい作業にはタッチしていないようでした」

「専務はどうすればいいと思う?」

「元経理の首では解決しませんよ」

「そうなんだ。どこから情報を得たのか髭の専務が元経理の派閥にプレシャーをかけているんだ。だが元経理は危険な男だよ。その場限りの仕事をする」

ならどうして支配人に指名したの?



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