第5話病気と付き合う 

あれから膀胱がんばかり検索しています。

半分くらいもう会社は終わりだなと覚悟していますが、でも最後の覚悟ができないのが人間です。

「どうなの?」

と女房に問われても答えられません。

本人自体が月に降りた宇宙飛行士みたいなものです。

何とか伸ばしてみよう!これは安易な選択です。

泌尿器科の待合室でもどうも落ち着きません。

「すぐに手術ですな」

またもやプレッシャー!もう少しデリケートに説明してほしい。

会社員の心配を全く分かってくれていない。

「時間がたてばますます悪化しますよ」

分かっています!

残念ながら膀胱がんも腎臓病も想定外です。

人生の設計ミスの訂正をこの晩年に計画せざる得なかった私の大きな反省です。

思ったより時間はなかったのです。

帰りにやけくそで馴染の京橋の立ち飲み屋を覗きました。

「珍しいなあ?」

昔の銀行の上司です。時々この店で顔を合わせます。

互いに別の会社に変わってもう久しい仲です。

「俺もまた会社を変わったのや」

そうです。2年前に彼は病気で会社を辞めたと言ってました。

「治ったのですね、よかった!」

「いや、病気と付き合うことにしたんや」

この笑顔に救われました。

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