生首ボウリング決勝大会!

ちびまるフォイ

ゴロンゴロンゴロンッ……カーーーンッ!\ストライク!/

「さぁ、始まりました。生首ボウリング!

 実況は私、首なし法イチがお届けいたします!」


生首ボウリング大会決勝。

腕利きのボウラーが腕を競い合う大会。


「両選手とも静かに準備を進めています。嵐の前の静けさでしょうか。

 勝利して、優勝賞品を手に入れるのはいったいどちらか!

 レッツ、ボーリング!!」


先行はチャンピオンからの投球。

一言も言葉を出さずに生首の鼻に指をつっこむ。


「あの生首は……スポーツ男子の生首ですね。

 五分刈りの髪型が床の摩擦を減らし、高い回転数を与えられます」


ゴウッ。


チャンピオンは生首を転がしてピンを蹴散らした。

安心してみていられるほどの安定のストライク。


「ナイスショット! さすがですね!

 生首ボウリングでは、お互いがずっとストライク出し続けて

 引き分けにならないよう使う生首にポイントを設けています」


実況は視聴者のためにルールの解説をフリップとともにはじめる。


「今回のスポーツ男子の生首はポイントで言うとスタンダード。

 高いポイントの生首を使えば使うほど、ストライクは出しにくくなります。

 っと、今度は挑戦者の投球です!」


そうこうしているうちに挑戦者は生首を磨いて鼻と口に指を突っ込んで構える。


「あれは……ハゲです。ハゲの生首です。

 ポイントは低いものの、弾道が安定しています。

 挑戦者は堅実な勝負に出ているというわけですね!」


ゴロンゴロンゴロンッ…………カーン!


「ナイスストライク! ただ、現在はチャンピオンがリードです。

 チャンピオンの二投目は――ああっ!」


チャンピオンが手に取ったのは2つの生首が連結している首。


「あれは……シャム双生児の生首です!

 チャンピオンは守りに入った挑戦者をあざわらうかのように

 あえてポイント差をあけるつもりです!」


生首2つが連結しているので投げにくいし転がりにくい。

レーン途中で生首が止まってしまえばガーター扱いになる。


「チャンピオンの投球っ……ストライク!! すばらしい!」


チャンピオンは無言でストライクを取ってしまった。

挑戦者の顔色は見えないが、間違いなく追い詰められている。


「さぁ、挑戦者の2投目です。

 この小説の長さ的にここで逆転しないと勝利はありません。

 一方で、ここで大きく点数をかせげば優勝になります」


挑戦者は吐き出される生首を見て品定めを行っている。

最後の棟的ともなると生首選びも慎重になってしまう。


「いったいどんな生首を選ぶんでしょうか……ああっ! あれは!!」


実況は思わず立ち上がってしまった。

挑戦者が選んだ生首は――。


「ゆるふわロングヘアの女性です! ロングヘアの生首を選びました!

 これはまさかのチョイス! 挑戦者は最後の大ばくちに挑むつもりです!」



毛先がカールして、さらに長い髪がストッパーになってしまい

生首ボウリングでは「使わずの生首」としてご法度扱いの生首。


「挑戦者、これでストライクを取る気でしょうか。

 そもそもピンまで届かせることすら難しいこの生首をどうするのでしょう」


挑戦者はなにも言わずに耳の穴に指を突っ込んで2投目を放った。


「アメージング!! 挑戦者はついに勝負を投げたのでしょうか!

 特殊なフォームでの投てきで生首は髪を振り乱して転がっていきます!!」


この生首を扱うセオリーは「とにかく勢いをつけて投げる」なのに、

挑戦者はあろうことか耳での投球で回転をかけてしまった。


振り乱された髪の毛は生首の速度をぐんぐん落としていってしまう。


「なんということだ! これではストライクが取れない!!」


ピンに到達するころには生首は減速しきっていた。

誰もがチャンピオンの勝利を確信したとき。



「ああ!! あれは!!」



実況が実況を忘れてしまった。


ばっさばさになった髪の毛がピンを絡めてストライクを取った。

生首をぶつけて倒すのではなく、髪の毛でピンを巻き込み転ばす。


「すばらしい!! こんな方法があるなんて!!

 生首ボウリングの優勝者は挑戦者です!!」


挑戦者はガッツポーズだけとって何も言わなかった。

チャンピオンは無言で拍手を送った。


会場には賞状授与の曲が流れる。


「生首ボウリング優勝おめでとうございます。

 優勝賞品をお受け取り下さい」


挑戦者は静かに優勝賞品の生首を受け取った。




「では、これにてデュラハンの生首ボウリング大会を終了します!!」



挑戦者のデュラハンは賞品の生首を自分に据え付けた。

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