姉と妹と俺と.....
田城潤
プロローグ、愛され過ぎて辛い。
さて、突然だが皆に聞きたい、
告白ってどう思う?
××××××××
告白と一言で言っても色々ある、例えば罪の告白とか、自らの性癖を晒すという告白など、告白の種類は色々あるのだが、現在俺が陥っている状況は、告白と言ったら? と聞かれたら大抵の人が真っ先に思い浮かぶ告白。
つまりは、愛の告白である。
と、まぁそんな訳で、俺は今、クラスの女子から告白を受けている。自分で言うのもなんだが、俺は極めてモテるほうであると自覚している。
顔面イケメン、成績優秀、更には運動神経抜群、本当に自分で言うのもなんだかかなりの優良物件である。
しかし、そんな完璧超人の俺は今までに彼女が出来たことが一度もない、何故だと思う?
「あ、あの、私」
そんな気持ち悪い完璧超人アピールをしているうちに、どうやら件の女子が意を決して俺に自らの熱い気持ちを告白をするらしい。
そんな真剣な雰囲気をぶち壊さないように必死に平然を装う俺の気も知らず、女子は言葉を紡ぐ。
「米田君の事が好きです! 付き合ってください!」
女子の目は真剣だ、冗談で無いことなどすぐに分かる、だがしかし、この告白の返事は既に決まっている、答えは勿論……
「……ごめん、君とは付き合えない、と言うか、今すぐここからの脱出を提案する」
そんな俺の返答が女子の意表を付いたのか、女子はポカーンとした顔で俺の顔を見つめる。
しかし、これには深い事情があってだな……
「こらぁー! この女狐! 私のカー君から離れなさい!」
「あ、アンタ! 誰のものに手を出してるか分かってる訳?」
ほれみろ、言わんこっちゃない。
俺に彼女が出来ない理由の一つがこれだ。
俺には姉と妹がいる。
しかしその姉と妹は只の姉と妹ではない。
そんな姉と妹を一言で表すとすれば……
『異常』だ。
×××××××××××
学校が終わり放課後の帰り道、俺は両腕を姉妹にホールドされ、冷や汗を欠きながら帰宅している。
「もぅ、カー君ったら、目を離すとすぐに別の女の子に告白されるんだから」
そう言って俺の左腕をがっちりと掴んで離さないコイツが、俺の姉である、米田 アイリだ。
容姿は、銀髪碧眼で髪は腰まで届く程の長さ、制服の上からでも分かる程の巨乳、そのくせに手足はスラリと細く、イイトコ取りの素晴らしいボディの持ち主だ、オマケに生徒会長とまで来た。
「いや、姉さんには関係ないだろ、俺が誰に告白されようが」
「良くない! カー君の恋人は私だけだから!」
「いやいや、俺と姉さんは血の繋がった家族だから……」
「真の愛とは血の繋がりすらも超越するのです」
エヘン、と俺の腕を離さずにドヤ顔で俺の顔をのぞきこんでくる俺の姉は、凄まじい程のブラコンだ。
「こらぁ! 篝はあたしのものだからね! いつからアイリのものになった訳?」
それから左の姉に負けじと俺の右側を陣取るコイツは、俺の妹である米田 エリーだ、容姿は同じく銀髪碧眼、髪はツインテール、胸は姉と比べると見劣りしてしまうが、それでも無いわけではない。
現に先程から俺の右腕には、柔らかい物の感触がある。
「いや、お前のものでも無いからな?」
「何言ってんのよ! 篝は生まれた時からあたしの恋人でしょ?」
「まず、俺が生まれた時にお前生まれて無いからな?」
「真の愛とは時間すらも超越するのよ!」
姉と同じ事を言ってるように聞こえるんだが、多分間違いでは無いだろう。
何だかんだ言って二人は仲がいいのだ、本人達は絶対に認めないが。
こうして、家に帰る俺を含めた三人の関係は、極めて複雑だ。いや、複雑と言うか異常だ。
こうなった原因は少なからず俺にもあるのだが、そんなことを差し置いてもこの異常な程のブラコンには目を見張るものがある。
「エリーは黙ってなさい? 貧乳は貧乳らしく自己主張を控えたらどうなの?」
「あ、あんたねぇ……私は貧乳じゃないから! あんたのその見苦しい脂肪のせいであたしのが小さく見えるだけよ!」
俺を挟んで言い争うのはやめて欲しい、生憎、周りには誰もおらず人目を気にする必要など無いのだが、それでも恥ずかしいったら恥ずかしい。それに、言い争っている内容もあまり上品とは言えない内容なわけで……。
「見苦しいとは何かしら? 胸の大きさとは即ち、心の大きさよ? だから私にはカー君を受け止められる程の心の広さがあるのよ!」
「その、胸のでかさ=心の広さとか意味不明だからね! 胸に栄養行き過ぎて頭に回ってないんじゃないの?」
「あら、これでも私は生徒会長よ? あなたよりも頭はいいけれど?」
どうやらこの言い争いは家に着くまで終わりそうにない。
だから俺はこの状況を打開することを諦めて、早く家に付けと念じるのであった。
××××××××××
「たっだいまー!」
「ただ今帰りました」
米田家の玄関には美少女二人の元気な声が木霊する、だけど、そのただいまの声に反応する声はなく、家の中には静寂だけが居座っている。
あれからもう数年ほど経つのだが未だに家に両親がいない、ということに俺は慣れずにいる。
「……ただいま」
「そんな寂しい顔をしないで、カー君」
「そうよ、篝には私達がいるじゃない」
俺を励まそうとしてくれる二人がいなかったら俺はもう立ち直れなかったかもしれない。
「でも……」
「カー君……」
「篝……」
俺は玄関に立ったまま思い切り息を吸い込む、そして家中に届くように声を張り上げた。
「俺はママが大好きなんだよ! ママがいないと生きていけないんだァァァぉああぁぁ!!」
自分で言うのも何だが、俺は過度のマザコンだ。それも、姉妹二人のブラコンを悪く言えない程に。
高校二年生になった今でも俺は母親離れ出来ずにいる。今すぐにママの胸に飛びついて思いっきり甘えたい。気の済むまで頭を撫でで貰いたい!
と、まぁ、そんなカミングアウトで分かるだろうが、これが俺に彼女が出来ない二つ目の理由だ。
「カー君……」
「篝……」
二人は俺を可哀想な目で見つめると拳を強く握り、俺の張り上げた声に負けじと声を出す。
「「あのクソババア、絶対殺す!」」
なんて事を言うんだこの二人は、君らのその整ったルックスもママの遺伝子のお陰じゃないか!
「なんて事言うんだ! 俺のママの悪口はいくら姉さんと、エリーでも許さんぞ!」
「うっさいこのマザコン篝! あたしの気持ちも知らないで!」
「最低ですカー君、こんな美少女よりも、年の行ったババアを選ぶなんて……」
「ママはババアじゃないぞ! まだまだ綺麗なままじゃないか!」
「「うるさい!!」」
と、こんなやり取りが毎日行われる内はまだ俺は大丈夫なのだろう。
しかし勘違いしないで欲しい、断じて俺はシスコンでは無い。
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