第26話
船は出港した。
貿易品を積み込み、船底に隠しておいた。
船首を南へ向け、邪魔さえ入らなければ、東へ航路をかえ、大陸の南東にある大国で品物をさばく予定だった。
船は長いこと緩慢に波にゆられ、帆は風を捕らえてたるむことなく張りつづけた。
嵐にみまわれても、海の男たちを煩わすことはなかった。
小島の目立つ海域が近くなり、帆をたたみ、船底にいる奴隷や雇われた男たちが櫂をこいだ。
カイヨウが懸念していた南海の海賊は今回にかぎってなりを潜めている。金で懐柔しようとしてもまったく聞き入れようとしない連中だった。
そのときのために、かれは火砲を甲板に用意して、不意の襲撃に対して用心していた。
目の前をゆっくりと小島群が船尾へと流れていく。シェングはカイヨウが許すかぎり、ぼんやりとその景色を眺めてひねもす過ごしていた。
かれのフーショウを見る目は敵意に満ちていて、あれ以来彼女がひとりでフーショウと会うのを警戒していた。
フーショウが退屈まぎれに股間をいじくっているのを見、カイヨウの愛情に縛り付けられ、シェングのなかのシーファが身をよじって悲鳴を上げた。
シェングの凍りついた感情を一身に背負ってシーファがわめいていた。
シェングはただ微笑んでいた。
しかし、疲れてもいた。不自然な疲労感にさいなまれ、彼女は船室のいすに腰掛けると、少しもしないうちに眠ってしまった。
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